裁判官「なぜ被告人を呼びとめて調査したのですか」警察「国の安全に関わるので言えません」
当局によるテクノロジーの濫用をどう防ぐのか。
FBIを始めとし、アメリカでは警察組織や国税庁までが利用している「スティングレイ(StingRay)」という携帯電話トラッキング・テクノロジーが物議を醸しています。スティングレイは携帯電話の中継塔に扮して端末からデータを奪うことができるテクノロジーなのですが、このテクノロジーに関しての情報が流れてほしくない警察はスティングレイを通じて入手した証拠をわざと提出しないでいるそうなんです。裁判で証拠として提出してしまうとその入手経路についても説明せざるを得ないため、そうすると裁判の記録として公になってしまうからです。
スティングレイの情報が公開されるくらいなら犯人を捕まえないほうがいいと判断することもあるようで、このテクノロジーをどうしても極秘にしておきたいようです。
しかしちゃんと毎回令状を取ってデータ入手/盗聴をしているのか、必要性のない軽犯罪にも使っているのではないか、関係ない一般市民のプライバシーの侵害にもつながっているのではないか、と多くのジャーナリストや弁護士が懸念を表明しています。
もちろん、重犯罪の解決やテロリストの逮捕につながる重要なテクノロジーなんだとFBIはアピールしているようですが、メリーランド州のアナポリス警察が5,000円程度のチキンウィング泥棒の捜査にも使っているなど当局側の使用へのハードルはかなり低いことが暴露されています。
Capital News Serviceによるこちらの記事ではアナポリス警察によるスティングレイ使用の問題点が実に細かく列挙されています。紹介されている逮捕劇のひとつをみてみましょう。
3年前のバレンタイン・デーの直前、Deon Battyはバスに乗ってボルチモアのショッピング街に向かっていました。バス停に着きバスから降りたところ、そこに警察官が待ち伏せていたそうです。Battyにポケットの中を見せろ、と指示したところポケットからは携帯電話が出てきます。そしてその場で警察官は、その前日に携帯電話を含む所持品を強盗された77歳の女性の電話番号にダイアルしたそうです。するとBattyが手渡した電話が鳴りだし...そしてBattyは逮捕されます。どうですか? もちろん、強盗は許せない犯罪ですし犯人が捕まったのは素晴らしいことです。ですがここでは別の側面に注目してみましょう。
なぜそのバスに乗っていることがわかったのか?
なぜそのバス停で降りることを知っていたのか?
なぜ盗んだ携帯電話を持っていることを知っていたのか?
なぜ令状もなしにBattyを止め、荷物を検査したのか?
どう考えてもすべて事前にわかっていたとしか思えないんですね。Battyを担当した公選弁護人のJanine Meckler氏は最初はスティングレイの存在を知らなかったため、なぜこんな逮捕が可能なのか全く理解できなかったそうです。
知り合いの弁護士に相談し、リサーチをした結果、これは間違いなくスティングレイによる捜査だと確信したそうです。裁判では、警察が証拠として電話を使おうとしました。なぜ電話の存在が(令状もなしに)Battyを呼びとめて調査することに繋がったのか説明を求められた警察は「国家の安全問題に関わりますので」と説明を断ります。
多くの人が危惧しているのはこういった黒い部分なんです。弁護人は警察にスティングレイ使用を認めさせることはできませんでしたが、のちにCapital News Serviceが入手した市の記録によってスティングレイの使用が確認されたそうです。
テロリズム対策、犯罪者の逮捕が目的なので余計にスティングレイの存在は複雑です。強力な捜査ツールとしてはありがたいものの、当局による濫用を防ぐことができるのかについては不安があるわけです。
source: Capital News Service
Chris Mills - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)
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