熊本地震で大規模断水 水道法の見直し議論始まる

熊本地震で大規模断水 水道法の見直し議論始まる
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大規模な断水が発生した熊本地震の教訓を踏まえ、水道法の見直しを検討する厚生労働省の専門委員会が開かれ、災害時の備えや周辺自治体との連携方法などについて、法律に盛り込むための議論が始まりました。
23日、全国の市町村の関係者や水道事業の専門家などで作る厚生労働省の委員会の会合が開かれました。
厚生労働省によりますと、熊本地震では34の市町村で最大およそ44万6000世帯が断水し、全国の自治体からおよそ1000人の職員が駆けつけて復旧に当たりました。しかし、災害時の自治体どうしの連携方法などについて事前に定めていなかったため、応援で来た職員の役割分担や給水車の配置場所などを決めるのに時間がかかったということです。
災害時の水道の復旧を巡っては、これまでも自治体どうしで協定を結ぶなどの備えが必要だと指摘されていて、専門委員会では今後、水道管が埋設されている場所の図面を共有したり、職員や給水車の配置場所を事前に定めるなど自治体の連携方法について検討することにしています。
厚生労働省は、専門委員会が年内にも取りまとめる報告書を受け、水道法の改正を目指したいとしています。

復旧の応援押し寄せ混乱も

一連の地震で一時市内全域で断水した熊本市には、給水活動や復旧作業でこれまでに合わせておよそ2000人の応援職員が入り、支援に当たっています。
しかし取材を進めると、地震直後に一度に大勢の応援職員が押し寄せたことで現場が混乱していた実態も分かってきました。熊本市では先月16日の地震以降、給水活動や復旧作業で、これまでに少なくとも県外の85の自治体から合わせておよそ2000人の職員が応援に入りました。
先月16日の地震の翌日には、全国からの応援職員は300人を超え、熊本市上下水道局では総務担当の職員に加え、現場の職員の多くも応援職員の宿や駐車場の確保などの対応に当たったということです。
また、自治体によって、使用している水道管の材質やボルトなどの形状が違うため、復旧現場で応援職員の工具が使えないケースも相次いだということです。
熊本市上下水道局維持管理部の中島博文部長は「ここまでの災害は想定していなかった。一気に大勢の応援が入ったことで、その対応に追われ、混乱してしまった。事前に、応援職員を受け入れるためのマニュアルなどを整備しておく必要があった」と話しています。

管路図が不完全 すぐに作業できず

先月16日の地震で震度7の揺れを観測し、一時全域で断水した西原村では、詳細な水道管の位置などが記された「管路図」がなく、応援職員らがすぐに復旧作業に取りかかれない事態が起きていたことも分かりました。
西原村では住民の半数近くが、村が管理・運営する簡易水道を利用していますが、先月16日の地震のあと一時すべての世帯で断水し、今も165世帯で断水が続いています。
地震のあと、村には神戸市や福岡市などからおよそ50人の応援職員が駆けつけましたが、地震直後はすぐに復旧作業に入ることができなかったと言います。
役場に保管されていた管路図には主要な水道管が記されていただけで、各家庭とつなぐ「給水管」や「止水栓」などの位置が記されていませんでした。このため、応援に入った職員らは各家庭を一軒一軒回り、敷地の一部を掘るなどして給水管や止水栓の位置を調べたうえで、復旧作業に当たらなければならなかったということです。
集落によっては調査だけで丸1日かかるケースもあったということです。
西原村の井上綾真主事は「古い家は配管が複雑なところも多く、こうした非常時に応援職員に力を発揮してもらうためにも、地図などの基礎的な資料を充実させる必要を感じた」と話しています。