挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
Bグループの少年 作者:櫻井春輝

第一章 Bグループの少年と特Aグループの美少女

1/27

プロローグ

 

 
 人には分相応というものがある。

 大きな役割を与えられる人間がいれば、小さな役割を与えられる人間もいる。その役割を大きく踏み外そうとすると、手痛いしっぺ返しがあるだろう。
 稀に上手くいく時もあるが、それが少数派だということは分かるだろう。
 そしてそれは、学生生活にも大きく左右される。
 いや、学生生活にこそ大きく左右されるのではないか。
 例えば、中、高の学校のクラスの場合、クラスには時間が経てば、グループが出来るだろう。そのグループを眺めていると、なんとなくかもしれないが、グループ毎には見えない壁のようなものがある。その壁がどんなものかといったら、単純で、分かりやすいものだと、第一に容姿が挙げられるだろう。
 男子は格好いい者同士で、女子は可愛い子同士で集まったりする場合が多い。
 この場合、容姿が優れていなくてもそのグループに溶け込める人間がいる。
 それはどのような者かと言ったら、容姿はそれほどでもなくとも、雑談が上手かったり、勉強が出来たり、スポーツの才能に優れたりと、つまりは何かしらの才能に特化したような人間であったりする場合が多いだろうが、一番多いのは、やはり陽気で人を笑かす能力に長けた人間だろう。
 このような者達が集まったグループはクラス内でも目立つだろうし、校内でもある程度は目立つものだ。そして、それより目立たないグループがあり、またそれより更に目立たないグループがある。話を簡単にすると、クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。
 そして、これらグループ間には先ほど述べた壁がある。人は異物には敏感である。Cグループにいる人間はBグループに混じることは難しいだろう。短い間ならともかく、長期間に渡って馴染むことは難しいだろう。
 しかし、逆だとそれほど難しい場合でもない。Aのグループにいたと思ったら、気づいたらBのグループにいる場合もある。
 もちろん例外もいるだろう。A、B、Cなどと関係なく接触する、いい意味で八方美人的な者もいれば、どのグループにも属さず、特定の友人とのみ付き合ったり、常に一人でいたりする者もいるだろう。
 そもそもA、B、Cなどと脳内で考察している人間など、どれだけいるだろうか。
 これらの壁はクラスが始まり、時間が経つことにより、体で感じ、自然と作られていくのだから。
 しかし、ここにこれらの考察をし、考察した末にBのグループに所属する少年がいる。
 その少年の名は桜木亮サクラギリョウ。高校二年の十六歳で、ダサイ黒縁眼鏡をかけ、少しだけ短めと感じる髪の毛を寝癖の出ない範囲でワックスもつけずにセットしている。
 中背で、引き締まった肉体をしているが、服の上からはそうそう分からず、容貌はスラリと鼻が高く整った顔立ちだが、眼鏡のせいか、また髪型のせいかその顔立ちも目立たない。つまりは一見、ごくごく普通のどこにでもいる少年である。
 彼――亮は自身の高校生活に大きな不満もなく、穏やかに流れる高校生活に概ね満足していた。
 彼の中学校生活は彼の仲ではいわゆるAグループ。Aグループの中でも、悪目立ちする友人達に囲まれたものだった。悪友達に囲まれ、振り回され、とても穏やかとは言い難いものであり、高校生活はせめてゆっくりと過ごしたいと考え、受験勉強を必死に頑張り、悪友達が行かない、もしくは偏差値の届かない高校を選んだ。
 そうして、せっかく頑張って入学した高校である。穏やかに過ごすことを邪魔されない為に、同じ轍を二度踏まないためにも、Aグループな人間には極力近づかないようにした。
 Aのグループでなければ、どんなグループでも構わないと考えた亮だが、実のところ彼としてはCなグループに入りたかった。しかし、Cグループなクラスメイトとは、会話も趣味も噛み合わないことが多く、自然な流れでBグループなクラスメイトと付き合うようになった。
 彼自身、クラスを見渡し、A、B、C、などと分けて見ているところがあるが、あくまで、Aな人達と付き合わず、振り回されないためだけの見方である。
 俗に「高校デビュー」といった、中学校のときはB、Cなグループにいたが高校の入学を機にAなグループに入ろうとした気概を表す単語があるが、彼の場合、これの正反対に当たるだろう。
 いうならば「逆高校デビュー」である。
 そして「逆高校デビュー」した亮は、Bグループの中でも、特に目立たずに過ごすよう注意し、いるのか、いないのかという実に存在感のないポジションを得て、静かな高校生活を一年過ごした。 この一年で、亮は自分の選んだ高校と過ごし方について、自分の選択が間違っていなかったことを確信し、絶対手放してなるものかと固く誓った。
 大した労力を必要としない誓いをした亮だが、そんな彼に転機が訪れる。後になって亮が思うに、この日の転機は自分の高校生活にとってプラスだったのか、マイナスなのか、大いに悩んだところであるが、結局のところ彼には結論を下せなかった。
cont_access.php?citi_cont_id=803014840&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ