これ以上近づきたくない、近づかれたくないはずなのに――
こんにちは、氷太よ。
今日は
おげれつたなか先生の
「錆びた夜でも恋は囁く」
を頂いていくわね。
本当は「錆」は金に青と書くんだけど変換されないのね・・・。
それにしても強烈な作家名よね。一度見たら忘れないんじゃないかと言うほどに・・。
でも作家名だけで内容を推し量る事は愚考の極みよ。
この作品はこちらがヒリヒリとするくらいの心身共に痛みを伴った人間のシリアスなストーリーになっているわ。
あらすじを見ていきましょう。
あらすじ
今日も殴られた。
恋人のかんちゃんに。
でもそれは別にかまわない。
そんな錆びた俺の前に、
中学の同級生、真山が現れて、
そしたら急に俺は気になった。
自分についた青あざとか、傷跡が。
だってお前はの頃と同じなんだ。
俺をキスだけで動けなくした、
あの雨の日と――。
こんな感じね。
過去と現在の心境。偽りの自分や本当の自分。
そういった部分を基本的に描いていく物語になっているわ。
ちなみにDV要素があるのこの作品。
とは言ってもさほどバイオレンスではないんだけど、1シーンだけ驚く部分があるわ。
「錆」というのはDVでボロボロになった自分。
「夜」というのが時系列的な部分もあるだろうけど、偽りの自分。
物語を通してアタシはそんな印象を受けたわね。
登場人物
弓 (表紙の子)
ある理由により、辛い出来事があっても笑顔でやり過ごす。
現在は高校生の時に出会った、かんちゃんと付き合っている。
日常的に暴力を振るわれている。
真山
弓の中学の同級生。
弓に対して果たせなかった約束があった。
真っ直ぐで不器用なタイプ。
かんちゃん
この作品から読み取れるのは何かを抱えた「謎のDV男」という事だけ。
詳しく知りたい人はスピンオフ作品「恋愛ルビの正しいふりかた」を見よう!
感想
ストーリー・キャラクター
話の設定・キャラクターの魅力自体には問題はないわ。
ただいかんせん、避けて通れない意見を述べると
各キャラクターの行動に起因するバックボーンが弱すぎる
という事。
あ、スピンオフ作品で描いているからという反論は受け付けないわ。
この作品はこの作品だけで評価すべきだから。
何故そこまでして我慢するのか?
何故そこまでの暴力を振るってしまうのか?
何故そこまで一途に相手を思い続けるのか?
どのキャラクターも裏づけというか説得力の弱さが際立つ事が残念ね。
シリアスな物語を扱っている以上、ここはちょっと致命的であると言えるわね。
それでいて力強い行動を起こすものだから、違和感があって物語がスッと入ってきにくいと思う。
ただその反面、理由に関しては弱いのだけれど行動や感情の揺れ動きに関する情景描写は凄まじいほどに良いわ。
理由が弱いから、本来であればただ単に全員が誰かに縋っているだけの陳腐な印象しか与えないはずなんだけど、ここを画力で補っているわね。
だからこそ、違和感を感じる部分もあるのだけれど、まさに感情というものを、絵で表そうとしているわ。
個人的には、弓がいつも以上のDVを振るわれて、思い入れのあるケータイを握り締めているシーン。
ここ、注目して欲しいわ。
だからこそもったいないわね・・・。
ここにそれだけの理由も描いていてくれれば、BL業界を牽引する作品になっていたかもしれない。
絵
・・・キレイなのよ?情景描写も良いのよ?
なのになんで採点を4にしたかと言うと、シーン毎によって
顎の長さが違うから。
なんでここシャクレてんだよ・・・って突っ込まざるを得なかったのアタシ。
単純に角度の問題よ!って怒られそうなんだけど、アタシはとにかく顎のシャクレ具合が気になるの。
発展
本編における発展シーンはシリアスそのもの。
DVが根幹にあるからね。
でも本編の続きにしっかりと幸せな発展シーンが描かれるんだけど、
同じ作品で同じキャラクターとは思えないほどコミカルに描かれているわ。
ここ、パラレルワールドかと思うほど違和感あるかもしれないけど、これが本当の2人の姿なのよきっと。
あーあ!混ざりてえな!!(錯乱
まとめ
この作品はそうねえ・・・。
物語の設定の中に詰めの甘さがあるから、本当に骨太なドラマを求めている方にはちょっとオススメはできないかな。
特に中盤が納得いかなくて感情移入できないかもしれないわ。
逆に物事を深く考えたくないけど、ある程度ドラマ性のある作品を読んで見たいって方にピッタリ。
美しい情景描写を堪能したい人にもオススメよ。