CrimsonBoots.com

【 個人だからこそ見える景色があるブログマガジン 】

「音楽ライターが、書けなかった話」の名言をまとめてみた

音楽ライターが、書けなかった話 (新潮新書)
 
神舘和典さんの著書「音楽ライターが、書けなかった話」を読んでみた。10年以上前の本だが、音楽ライターとしての視点が非常に面白い。
 
スポンサーリンク

 
【p.15】
 そのアルバムについて、坂本さんはとても不思議なエピソードを話してくれた。ピアノを弾いているうちにあの世からジョビンの魂が降りてきて、それまでの自分の音とは異なるサウンドが生まれた、というのである。
 
 
 
【p.20】
 いい映画、いい監督であるほど、音楽をのせるように誘っているシーンがあるという。まるで街角で娼婦が男を誘うかのように、映像が音楽家にオイデオイデしているのだそうだ。音楽家は“男として”その誘いに応じなくてはいけない。
 
 
 
【p.63】
 アーティストは、自分自身が作品をつくるだけであり、音楽に限らず、アートやエンターテイメントへの思いや理解がとても深い。だから、アーティストとして優れている人は、多くの場合、リスナーとしても優れている。
 
 
 
【p.77】
 音楽の世界では、多くの音楽家からリスペクトされる特別な音楽家がいる。
 すでに書いたローリング・ストーンズだって、黒人のブルースマン、ロバート・ジョンソンに憧れていた。音楽家の音楽家へのリスペクトは、食物連鎖に似ている。
 
 
 
【p.81】
 ブランフォードは、マイルス(デイヴィス)の『デコイ』に参加してから、自分に対する音楽家たちの態度が明らかに変わったという。まず一流としての扱いを受けるようになった。その上、多くの音楽家が録音のときの話を聞かせてほしいと連絡してきたらしい。
 愉快なのはジョンスコで、彼はマイルスのグループのギタリストであったにもかかわらず、ショーの後に、マイルスのサインをもらうためにファンの列に並んだという。
 
 
 
【p.81】
 マイルスのソロのときに、会場が停電になった。ところがマイルスの集中力はすさまじく、電気が消えているのも気づかずにトランペットを吹き続けた。そして、次はマーカスがエレクトリック・ベースでソロを弾く番。
 停電に気付いたマーカスは、エレキベースをあきらめ、サックスを手にとって吹き始めた。するとマイルスは、ベースを弾け!と激怒したという。マーカスがおそるおそる停電のことを伝え、そこで初めて、マイルスは会場が真っ暗であることに気づいた。
 
 
 
【p.92】
 こういう音楽家に尊敬される音楽家は、ほかの人とはどこが違うのだろうか。
 リスペクトされる理由には、もちろん、優れた創造力や高度な演奏技術もあるだろう。しかし、音楽家同士でリスペクトされる音楽家には、音楽家としての力量を超えた何かを私は感じる。尊敬される音楽家は、音楽を愛しているだけでなく、音楽に対する誠実さを特に強く持っているのではないだろうか。
 その誠実さとは、どういうところに現れるのか。まず、リスナーにこびない。そして、マーケットにもこびない。そういった姿勢に現れていると思う。
 
 
 
【p.94】
 日本にいると、白人はマジョリティで黒人はマイノリティと認識されている印象がある。しかし、こと音楽シーンでは(クラシックは別だけど)、その逆。白人が黒人に憧れるケースが多いのだ。
 
 
 
【p.103】
 つまり、一般の良識から判断したら、かなりでたらめな人なのである。
 しかしクラプトンは、そういうでたらめな自分をよしとしているわけではない。むしろ常に悩んでいて、そこからくるあらゆる苦悩から救ってくれるのが、ブルースであるとイギリスでのインタヴューで話している。そう考えると、彼が歌うブルースはさまざまな苦悩からの解放を求める切ない叫びにも聴こえる。
 
 
 
【p.141】
 音楽家が緊張を強いられるニューヨークという街にあるMSGだからこそ特別な演奏が生まれるという事実は、間違いなくある。だからこそ、MSGで作られた上質なライヴ盤、有名なアルバムはとても多い。
 
 
 
【p.167】
 よく「好きな事は仕事にせずに趣味として楽しんだ方がいい」という意見を耳にするが、私は“好き”を仕事にした方がいいと思う。好きだからこそ努力をするのだ。眠る時間がなくたって平気なのだ。嫌な事で、何日も徹夜をするのはつらい。
 
 
 
【p.187】
 ハービー・ハンコックと初めて会ったときのことである。
 私はハービーに、彼が長く音楽を続ける最大の理由を聞いた。
すると―、
「オー!それは素晴らしい質問だ!」
 質問したこちらが驚くくらいの感嘆の声を上げ、実にわかりやすく説明してくれた。
 彼にとって音楽は「ヒューマニティを発展させ、人生をビルドアップするための最高の手段」だという。
 つまり、こういうことだ。
 ハービーが音楽をつくりライヴ・パフォーマンスを行う→その音を聴いてオーディエンスやリスナーが興奮し感激する→そのオーディエンスやリスナーと触れ合うことによってハービーのヒューマニティはさらに発展する。
 それを繰り返すことによって、ハービーの人生はビルドアップされていく。それを感じることが、彼自身の最大の快楽なのだという。
「どんなにおいしいご馳走よりも、ハワイの輝くビーチよりも、美しい女性とのベッドよりも、僕にとって、音楽は、全てに優る快楽なんだよ」
 
 
全体的にはタイトル通り、音楽ライターとして普段かけなかったであろう内容。有名アーティストたちのプライベートな側面を見ることで、“音楽家とはなにか?”といった哲学的な部分へフランクに迫る事が出来る。

大部分がアーティストや音楽アルバム、ライヴハウス、スタジオなどの話題。最後の章だけは、神舘さんご自身がどのようにして音楽ライターになったのか、または音楽ライターはどのような仕事なのか、というライター業の解説が中心となっている。
 

【関連記事】

【こちらもオススメ!】

 
スポンサーリンク

当サイトでは著作権法第32条に基づいた画像引用及びアフィリエイトを介した画像利用をしています。
権利者様側から引用画像などの削除要請、または注意警告を頂いた場合は即対応致します。