イギリス EU離脱の場合 日本企業への影響は

イギリス EU離脱の場合 日本企業への影響は
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EU=ヨーロッパ連合からの離脱の賛否を問うイギリスの国民投票まで23日で1か月となりました。イギリスがEUから離脱した場合、日本の企業にとってもさまざまな影響が出ると指摘されています。
JETRO=日本貿易振興機構によりますと、影響の1つは「関税」です。
日本のメーカーの中にはイギリスに生産の拠点を置き、EU各国に製品を輸出するという体制をとっているところがあります。EU域内の貿易は、現在は関税がかかっていませんが、イギリスがEUから離脱した場合、域内の国との貿易に関税がかかる可能性もあります。
中でも日本の大手自動車メーカーは、イギリスに生産拠点を持っていて、現地の業界団体のまとめでは、去年、イギリス国内で生産された158万台のうち半数近くを日産自動車、トヨタ自動車、ホンダの3社が占めています。これらの自動車の多くはEU各国に向けて輸出されているということで、仮に離脱によって関税がかかるようになれば、販売への影響も予想されます。
もう1つの影響は「ビジネス環境」です。
多くの日本企業は、ヨーロッパ全体のビジネスを統括する部署をイギリスに置いています。ただ、離脱によってEUのルールに基づいたビジネスの制度や規制が変わる可能性があります。
さらに、現在、EU域内ではビザを取得しなくても行き来ができ、移住も原則として自由ですが、イギリスが離脱した場合は手続きが増える可能性があり、ビジネスの利便性や雇用の面からイギリス以外の国にヨーロッパの拠点を移転するなど見直しを迫られるケースも出てくるのではないかとJETROではみています。
JETROは「国民投票で離脱が決まった場合も、実際に関税の扱いや移民の規制などは、正式に離脱する2年後までにイギリスとEUとの間で協議されるとみられ、今の時点ではどうなるか不透明だが、日系企業には事業展開の在り方を見直す必要が出てくるだろう」と話しています。

日立はEU離脱に強く反対

イギリスがEUから離脱することに強い反対の姿勢を示しているのは、イギリスで鉄道事業を強化している大手電機メーカーの「日立製作所」です。
日立はおととし、イギリス政府から、ロンドンとスコットランドなどを結ぶ高速鉄道の車両866両と、27年間の保守点検事業をおよそ1兆円で受注しました。鉄道事業の今年度の売り上げは、2年前のおよそ3倍にあたる5000億円を見込んでいて、主力事業の1つと位置づけています。
さらに、去年9月には、イギリス北部のニュートン・エイクリフに鉄道車両を量産する新たな工場を作り、生産を始めました。将来的には、この工場をEU全域に鉄道車両を売り込んでいく拠点にしたい考えです。
しかし、イギリスがEUを離脱した場合、EU域内への輸出に新たに関税がかかる可能性があり、イギリスに工場を置くメリットが生かせなくなる懸念があるとしています。
日立製作所の東原敏昭社長は「イギリスがEUの一員であるということで鉄道工場を作り、そこからEUに展開する前提でいるので、離脱は絶対に反対だ。イギリスが離脱することで、ほかにも離脱したいという国が出てこないかなど、ヨーロッパ全体が不安定感を増すのではないかと心配している」と話しています。
また、中西宏明会長は今月、イギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズに「日本の投資家はイギリスのEU残留を望んでいる」と題した文章を寄せました。この中で「EU市場全体を見据えて最良の拠点だからイギリスに投資をした」として離脱に対する懸念を示しています。