BSトピックス スペシャルコラム
ドキュメンタリー
2016年05月11日

「世界一の鼻」「世界一の舌」そして「世界一のサービス」を競い合う! ~BS1スペシャル「激戦!おもてなしのアスリート~世界ソムリエコンクール~」~ BY 福山 穣 

semifinal.png今年4月、南米アルゼンチンで開かれた世界ソムリエコンクール3年に一度開かれるソムリエのオリンピックです。
58か国の代表が一堂に会し「世界一の鼻」「世界一の舌」そして「世界一のサービス」を競い合い激しい戦いを繰り広げました。

実は、今回の撮影クルーはソムリエコンクールの取材が初めてではありません
私とカメラマンは前回東京大会に続き2回目、プロデューサーの角野は6年前のチリ大会から3回目、コーディネーターの小西さんに至ってはなんと9年前から、4回目の取材です。
そんな我々にとっても、今回のコンクールはまさに空前絶後!!驚きの連続でした。

ishida_BT1.pngコンクール最大の見せ場はブラインドテイスティングワイン香りから、そのワインが いつ どこで どんなブドウから作られたか推理するものです。
マンガ『神の雫』などでもおなじみですが、現実はマンガのようにはいかず、世界トップソムリエたちでもなかなか当たりません。私が取材した3年前の東京大会でも、決勝に出た4杯のワイ1.pngンのうち、ベルギーの選手が1杯のワインを見事当てたのみ、でした。

ところが今回の決勝戦は違いました各選手が次々に当てていくのです。まさにリアル『神の雫』『神の雫』でワインに興味をもった私は、震えました!

 

ishidasmile.pngそして人生をかけた各国代表選手と、彼らを支える人々とのにも震えました!決勝戦が終わり、ステージの上にそれぞれの家族が上がり、抱き合い、祝福のキスをし、そして慰め合い、涙を流した時。撮影していた私の目にも、があふれてきました。私だけではありません。残っていた観客たちもみんな涙を浮かべていたのです…。

笑いあり!涙あり!歴史に残るソムリエたちの名試合をぜひその目でお確かめください。

前編後編合わせて100分間という長尺番組を作ることになったと聞かされた時、いったいどうやって作ろうか、などと思っていましたが、とんでもない!もっと長くてもいいくらいです(笑)

ここでは、番組の取材中、私が特に印象深かったシーンを紹介したいと思います。

日本ワインのスター生産者たち

取材中、特に印象的だったのが、コンクールに出場する選手たちと、ワインの造り手の皆さんとの交流の様子でした。お互い尊敬しあい、信頼しあっているオーラがあふれでているのです。

somurie1.jpg日本代表の森覚(もり・さとる)さんは、大会直前山梨県の勝沼を訪れて、日本ワインの生産者の皆さんと一緒にブラインドテイスティングのトレーニングを行っていました。多忙なワインの仕込みの合間を縫って集まっていたのは、雨宮吉男さん、三澤彩奈さん有賀裕剛さん、斎藤まゆさん、といった、日本ワイン界を代表するスター生産者の方々。
皆さんがそれぞれ、コンクールに出題されそうなワインを集め、森さんのブラインドテイスティングをサポートしていました。(ちなみに「当たらないんですよね」といいながら、森さんは8本中5本の品種を当てうち2本は生産国も当てていました。)

コンクール直前アルゼンチンに入ってからも、石田博さん森覚さんはお二人で一緒に、アメリカ出身の天才ワインメーカー、ポール・ホブスさんのワイナリーを訪ねテイスティングを行っていました。

世界第5位のワイン生産国であるアルゼンチン。かつては「地元の人たちが飲む安いワインの国」というイメージもあったのですが、近年すばらしいワインを作る可能性を秘めた産地として注目されているのです。その旗手のひとりでもあるホブスさんとともに、刻一刻変わっていくワインの今を鼻と舌で確認していく二人。
コンクールに16年ぶりの挑戦をした石田さんが言っていました。「16年前とは世界のワイン事情がまったく違う。いいワインを生む産地がすごく広がった」と。

somurie2.jpgすべては変わる。
ワインも変わる。
けれども変わらないものもある。

それは、ソムリエのおもてなしの心と、ソムリエを支える家族の絆かもしれない。
そう思ったアルゼンチン取材でした。

放送予定
BS1スペシャル「激戦!おもてなしのアスリート~世界ソムリエコンクール~」
BS1 5月22日(日)午後7時~

福山 穣

【コラム執筆者】
福山 穣

NHKエデュケーショナル特集文化部(美術)ディレクター。これまでに担当した番組は「みいつけた!」「デザインあ」「日曜美術館」「SWITCHインタビュー達人達」「かおテレビ」など。社会人になって『神の雫』を読んでからワインを好きになるが、お酒は弱い。