絶滅が心配な生物の国際取引を規制するワシントン条約締約国会議の事務局は、今秋3年ぶりに開く会合の議題を公表した。日本の消費量が多いニホンウナギや太平洋クロマグロを新たに規制対象に加える議案の提出はなかった。
しかし、政府や水産関係者は当面の規制がなくなったことで安堵してはならない。いずれも資源状況は危機的であり、漁獲や流通で厳格な管理が急務だ。
すでに条約で規制対象のヨーロッパウナギは稚魚の密輸が横行している。欧州連合(EU)はニホンウナギも対象に加える規制強化より、取引実態の把握と不正の排除を優先したとみられる。
アジア地域に生息するニホンウナギの資源管理は日本や中国、韓国、台湾が2012年から枠組み作りを協議している。だが、養殖施設に供給する稚魚の数量制限には中国などが難色を示し、厳格な管理は実現できていない。協議に参加していない香港を経由し、大量の稚魚が日本に輸入される現状も指摘されている。
ウナギは人工稚魚の生産も難航しており、アジア地域で年間3億匹必要とされる養殖用稚魚の供給はすべて天然資源に依存している。日本は各国・地域と協力し、資源管理の徹底と取引の透明化を急ぐべきだ。
太平洋クロマグロの資源が激減した主因は、最大消費国の日本が過去何十年も未成魚の乱獲を続けたことにある。ワシントン条約で国際取引を規制しても、日本の未成魚乱獲が改善しなければマグロ資源は回復しない。米国などが提案を見送った理由とされる。
日本近海を含む海域でマグロ類などを管理する国際機関、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は、日本などの加盟国が未成魚の漁獲量を02~04年平均の半分以下に抑えることを決めた。
国内でも昨年から地域や漁法ごとに漁獲上限を定めたが、管理手法はまだ試行段階だ。資源危機は水産業の危機であることを認識し、漁業者も協力してほしい。