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繰り返す悲劇…地位協定、議論再燃も

 行方不明になっていた沖縄県うるま市の女性会社員(20)の遺体を遺棄したとして、沖縄県警が元米兵の男(32)を逮捕した。米兵や軍属による事件・事故は、在日米軍の法的地位を定める日米地位協定によって日本側の捜査が制約されるケースがしばしば起きており、沖縄県はかねて地位協定の改定を求めてきた。今回の事件で、基地の整理縮小とともに地位協定の改定を求める声が改めて噴き出しそうだ。【比嘉洋】

 全国の0.6%の面積に在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄県では、米軍関係者による犯罪が後を絶たない。県民や議会は事件発生の度に日米両政府に再発防止策を求め、大規模な抗議集会を重ねてきたが、有効な手立ては講じられていないのが現状だ。

 県警によると、1972年の本土復帰以降、在沖の米軍人、軍属、家族ら米軍関係者による犯罪の検挙数は2014年末までに5862件に上り、うち殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪事件は571件あった。昨年も34件の事件が検挙され、うち凶悪事件は3件(いずれも強盗)あった。

 95年9月に起きた米兵3人による少女暴行事件では、沖縄の反基地感情や反米感情が爆発し、日米両政府が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の全面返還で合意するまでに至った。政府が進める普天間飛行場の県内移設に沖縄で反対の声が強いのも、米軍関係者による犯罪に悩まされ続ける県民の憤りがある。

 一方で、米軍関係者による事件は、日米安全保障条約に基づき60年に日米間で結ばれた日米地位協定により捜査が制約されるのが特徴だ。

 地位協定は、米軍人らが基地の外で起こした事件や事故でも、公務中であれば裁判権は米側にあると定める。公務外でも容疑者の身柄が米側にあれば、日本側が起訴するまで米側の身柄拘束を認めている。95年の少女暴行事件でも、米側が先に容疑者の身柄を拘束し、県警が身柄引き渡しを請求したが、米側は地位協定を盾に拒否した。

 県民の猛烈な反発を受け、日米両政府は同年10月、凶悪事件に限って起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的考慮を払う」とする運用改善で合意した。04年4月には、取り調べ段階での米軍捜査官の立ち会いを条件に、範囲をすべての犯罪に拡大した。

 しかし、02年に具志川市(現うるま市)で起きた米兵の女性暴行未遂事件では、米側が県警の身柄引き渡し要請を拒否した事例もある。

 今回、逮捕された米国籍で元米兵の男は米軍基地で勤務していたが、米軍との直接的な雇用関係があるかは不明で、地位協定が適用される「軍属」に当たるかどうかは分からない。仮に軍属だったとしても、日本の警察が逮捕しており、日本側が身柄を拘束し続けることになる。

 ただ、沖縄は地位協定の存在が米軍関係者の相次ぐ犯罪の「諸悪の根源」と批判。協定の改定を強く求めているが、日米両政府に応じる動きは見られない。

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