避難所の掃除、炊き出し、子どもの遊び相手。倒壊した家屋から家族写真や位牌(いはい)を捜しだす仕事……。行政の手が届きにくいことに、ボランティアが目配りし、手助けする。

 熊本地震の被災地では、全国各地から駆け付けた人たちが活動を続けている。目の前で困っている人に、すぐに手を差し伸べる。災害復興に欠かせないそんなボランティアの役割を、この機会に再認識したい。

 熊本県益城(ましき)町で活動するNPO法人「日本災害救援ボランティアネットワーク」(兵庫県)は、足湯のサービスをしながら被災者の声に耳を傾けている。手足のしびれを訴える人を医療関係者につないだり、スイカの収穫に人手が足りないと聞けば箱詰め作業を手伝ったり。

 「被災者のニーズは多種多様だ」と理事長の渥美公秀(ともひで)・大阪大大学院教授はいう。

 95年の阪神大震災では全国から延べ130万人以上がかけつけ、「ボランティア元年」と言われた。以来、様々な団体が新潟県中越地震や東日本大震災などで実績を重ねてきた。まず被災者に寄り添う。渥美教授たちの活動も経験に基づくものだ。

 今後、熊本では仮設住宅などへの移転が始まり、引っ越しの手伝いや移転先での支援も必要になってくる。だが、ボランティアを求める熊本県の15市町村全体で、大型連休中は1日3千人前後が集まっていたのに、最近は500人を切る日もある。

 息長く続けるためには、活動を支えるしくみも必要だ。

 文部科学省は先月、学生が安心してボランティアに参加できるよう、単位認定などで配慮を求める通知を各大学に出した。

 経験のない学生でも現地で活動し、得るものは多いだろう。大学側には積極的に学生を支援する姿勢を求めたい。

 企業の役割も大きい。経団連の昨年の調査では、アンケートに回答した企業の約半数にボランティア休暇制度があった。警備会社のALSOKは、数カ月単位で社員有志の派遣を始めた。長期的な支援のために、企業の継続性は強みだ。

 超党派の国会議員らでつくる全国災害ボランティア議員連盟は、被災地までの交通費や宿泊費を軽減する制度の創設を国に求めている。ボランティアの裾野を広げるという意味で検討に値するのではないか。

 災害ボランティアをすると、被災地の「サポーター」になる人が多いという。特産品を買い、再会を求めて旅行にも行く。交流が続けば、長く被災地を支えることにもなるだろう。