G7と世界経済 目先の対策から脱却を
何とも結束の感じられない主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議だった。
焦点の世界経済に関する「一致点」は、G7各国が、それぞれの実情に合わせ、必要な政策をバランス良く実施していく、という反対のしようがない内容である。為替や財政政策をめぐっては、主要国間の姿勢の違いがかえって鮮明になった。
年明け以降進んだ円高を修正し、財政出動でG7の共同歩調を演出する−−。安倍政権がG7首脳会議(伊勢志摩サミット)に期待する主な成果の一つといってよい。
しかし、為替をめぐっては、特に日米間で対立が続いている。年初から対ドルで一時15円ほど円高が進行した相場を「偏った動き」と問題視し、「市場介入の用意がある」(麻生太郎財務相)と繰り返す日本政府に対し、米政府は「(相場は)秩序を保っている」と、くぎを刺してきた。この会議に合わせ行われた日米財務相会談でも、米側は日本の円安誘導をけん制した。
G7は、自国の輸出を有利にする通貨切り下げ競争をしないことで一致したものの、解釈をめぐる対立は消えていない。
一方、財政出動では、単年度の財政収支が黒字で、国の債務残高でもG7中、最も優等生のドイツが同調しなかった。財政出動の景気浮揚効果は長続きしないというのが主な理由だ。財政の余力は、景気刺激に活用するのではなく、移民・難民の受け入れや将来の高齢化に備えるために使おうといった姿勢である。
大規模な金融緩和策、財政出動、成長戦略の「三本の矢」からなるアベノミクスが始まり3年以上がたつ。だが、日銀による金融緩和が中心で、成長戦略(構造改革)はめぼしい成果を上げていない。その金融緩和頼みにも限界が見えてきた。最近の円高は、それまで株価全体を押し上げてきた輸出企業の業績に影を落としている。
そこで円高に警鐘を鳴らしつつ、再び財政出動に軸足を置こう、というのが安倍政権の戦略なのだろう。だが、国の債務残高がG7で突出している日本が、財政出動で需要を創出しようと提案していることを各国はどう受け止めているだろうか。
財務相・中央銀行総裁会議での議論は、26、27日に開かれるサミットに引き継がれる。目先の景気刺激策にとらわれるべきではない。
各主要国内でも地球規模でも大きな問題となっている貧富の差の拡大にどう対処していくか。政治の安定にも関わるこうしたテーマこそG7が取り組むべき課題だろう。今の為替水準が適正かどうかで意見を戦わせている場合ではあるまい。