高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について検討している文部科学省の有識者検討会が先週、報告書案の議論に入った。

 機器の点検漏れなどが次々と発覚したため、原子力規制委員会が昨年11月、原子力研究開発機構(原子力機構)に代わる運営主体を探すよう馳浩・文科相に勧告した。それを受けての作業である。

 しかし、報告書の原案は具体的な運営主体について記さず、「研究開発段階炉の特性を踏まえた保全計画の策定・遂行能力がある」「社会の関心・要請を適切に反映できる」など、当たり前で従来も言われてきた条件を示すにとどまった。

 案は「これまで繰り返し改革に取り組んできたが、十分な成果が上がっていない」とも指摘する。今回に限って改革が成功し、もんじゅの管理が十分改善される理屈は見当たらない。

 年間200億円もの維持費がかかり、巨額になるのが必至の安全対策費は現時点で試算すら出せていない。もんじゅは、やはり廃炉にすべきだ。

 最大の問題は検討会でも指摘が出た通り、費用対効果の議論をしていない点だ。

 もんじゅを誰がどれほど必要としていて、運転のためにどれだけのお金を投じる用意があるのか。その検討がすっぽりと抜け落ちている。

 もんじゅはいまや、国の原子力政策でも微妙な存在だ。

 かつては、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃やす核燃料サイクル実現に向けた中核的施設という位置づけだった。

 だが、1995年のナトリウム漏れ事故以来20年以上もほとんど運転できていない、その間に核燃料サイクルの必要性は薄れる一方で、民間に高速増殖炉を望む声はないに等しい。3年前に文科省がまとめたもんじゅ研究計画では、高速炉より廃棄物対策での研究を前面に打ち出すしかなかった。

 それでも、政府がもんじゅの旗を降ろさないのは、核燃料サイクルに影響が及ぶことを警戒しているからだ。

 しかし、サイクルはもはや虚構に近い。政府がそう認めれば、各地の原発が抱える大量の使用済み燃料の処理問題が一気にクローズアップされるのが必至だ。それをごまかそうともんじゅを抱え続けるのでは、あまりに問題が大きい。

 廃棄物処理の研究は基礎段階だから小型実験炉で十分だし、その方が効率的だ。もんじゅを延命する理由にはならない。