どうせマジ使えない人工無脳だろうと思って「納品された机の脚に傷がついていたのでどうにかしてほしい」という設定でチャットしてみました。
「机の脚が欠けてるんだけど」
…いきなりギブ攻撃された。もちろんいじわるで「傷という単語を使ったら連想して類似ケースで回答してくるだろう」と想定して質問したんだけど。「欠けてる(欠けている)」もネガティブな辞書に入れて返品に誘導するべきだよなあ。
「だから、届いたデスクの脚が欠けているんだよ」
…思った以上に無能だぞこの子。「だから」のノイズに引っかかるかなと思ったら、それ以前に「届いた」という修飾辞から配送関連の回答を出してしまった。ある程度構文情報を参考にしていれば、主部がデスクの脚であるなり述部が「欠けている」なりに着目するはず。戦略が少なすぎる。
「ちがうって、もう届いてるの!」
まあ、こういう逆切れパターンはこちらにコミュニケーション取る気が欠けてるのでしかたない。ネガティブなセンテンスであることを読み取りつつ主題が「配送」であるパターンの定型回答を出してきただけで十分実用ではある。ただ、「お手上げだから定型回答した」にすぎないのでデッカードのテストには速攻引っかかるだろう。
「商品はあってるんだけど、机に傷がついてるんだよ」
どっから「仕様」が出てきたんだよ…。しかもニコニコしてるし。このあたりでさすがに飽きた。
思った以上に相手がぬるかったのでこちらがびっくりした。ちなみに「わざと答えにくい質問をしているのでは?」という意見はあたらない。サポートの前面に立つ顔だと考えると、相手がコンピュータだからと遠慮しないびっくりぽんな質問をされるケースのほうが多いはずだ。
注意しておくが、別にこういうサービスをくさしたいわけではない。カスタマサポートの負担軽減を目的とした「防波堤」としては有意義だし、多くの場合は企業好感度の向上につながる。
ただ、「味のシンギュラリティや~」「もうサポート人員は削減できるんだよ!ΩΩΩナンダッテー!!」といった浮かれた評価があまりにも目につくので、「いや、そんなことないから」という事実を指摘しておきたい。こういった自動チャットサービスは20年前にはもう確立していて、いくつかの企業が自社サイトなどに組み込んできた。クオリティ的にはそこからほとんど進歩していない。せいぜい「エキスパートシステムに人工無脳をあえて仕上げました」的なもののままだ。
もちろん、新しい技術に挑戦することはとてもだいじだ。でも、古色蒼然としたものをバズワードで塗り固めただけでホイホイ買ってしまうと、不幸が拡散する。過去の事例で、実情に疎い決裁権者が売り込まれてだまされ、現場の人間がトホホな思いをするのをイヤというほど見てきている。コンシューマも含めて誰も幸せにならない。
それから、参照サイト中の文章で、
6.5人て…年間コストにしたら数千万単位でのコストカットになってるじゃないすか
なってねーよ! 年額1千万かかるって、どこのコールセンターがそんな正社員雇ってんだよ!
ふつう、インバウンドのカスタマーサポートコールセンターはオール派遣社員(いまはSVも派遣なことが多いんだそうな)。担当1人増やすごとに1千万も要求してたら派遣会社が取引切られるわ。
そもそも、コールセンター業務は「まとめて外部に委託する」ケースが多いので、人件費もバルクで計算される。いきなり数千万もの費用削減にはならない。
もちろん「6.5人ぶんの削減」というのは「コール時間の総計」でそういう数字が出たのだろうし、そこまでは否定しないが…。「マナミさん」のライセンス料をがっぽり取られることを忘れてはいけない。そのうえで、FAQページと同様にわけのわからない問答をさせられてイライラした顧客が「もうこねえよ!ウワアアン」状態になってロイヤリティを下げているかもしれないという可能性もね。