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【社説】

燃費不正拡大 消費者を向いた競争を

 三菱自動車に端を発した燃費データ不正問題が、スズキにも飛び火した。一連の報道で、メーカー任せの燃費測定の実態も浮き彫りになり、業界全体や燃費基準そのものにも不信の目が向いている。

 スズキでは二〇一〇年ごろから、燃費測定の前提となるデータを法令と違う方法で取っていたことが発覚した。

 本来は屋外のテストコースで車種ごとに実車走行し、空気抵抗やタイヤの摩擦のデータを集めなければならない。ところがスズキは、自社テストコースでは風が強く安定したデータが取りにくいため、屋内の風洞装置を使うなどして不足分のデータを算出。国に実走データとして報告していた。

 三菱自の不正で最も問題視されたデータ改ざんとは異なるものの、室内データを混ぜたのは「法令軽視」と言われても仕方がない。軽自動車の主力メーカーであるスズキの失態だけに、業界全体の信頼が損なわれる懸念がある。

 一連の問題が起きた背景に、燃費測定が相当程度、メーカー側が自己申告するデータに基づいている実態がある。国が全データを自力で集めるのが理想だが、各メーカーの新車開発のペースを考えると現実的ではない。とはいえ、これ以上不正が広がれば、性善説に立った現制度の見直しは避けられない。メーカー側は公正な測定を肝に銘じてほしい。

 そもそも消費者は、現行の燃費基準そのものにも疑念を抱いている。法令通りに燃費を測定された車でも、消費者が実際に走行すると、カタログ通りの燃費が出ない現実は広く知れ渡っている。

 各メーカーに屋外での実車走行を求めているにもかかわらず、最終的な国の燃費試験は屋内で行われる。車体を台に固定し、エアコンもラジオも消し、ローラー上で駆動輪を回す。こうして測ったカタログ上の燃費が、実燃費と差が出るのは当然といえる。

 一般ドライバーからの給油情報を基に、実燃費の比較をするインターネットのサイト「e(イー)燃費」では、皮肉なことに法令通りにデータを取らなかったスズキの軽自動車「アルト」が二〇一五年の最高燃費を記録している。こうなると、法令やメーカー間の熾烈(しれつ)な燃費競争がどこを向いているのか、消費者は戸惑うばかりだ。国を含めた自動車業界全体が、消費者の目線に立った燃費基準を追求することこそ、不信感の広がりを食い止める一歩となる。

 

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