憧れのSFC
高校時代、それまで住んでいた町から会津若松に引っ越して、母と一緒にアパート暮らしをすることになった。ファミコンは実家に置いてきたので、その時代は家でゲームをすることができず、専らゲームはゲーセンが主だった。
本当はスーパーファミコン(以下SFC)を買って欲しかったのだが、テレビが一台しかない上に、なまじ進学校に行ってしまった為に買ってもらえず、悶々とした日々を過ごしていた。
どういうわけかうちの学校には電気部という部があって、そこにはX68000やらSFCやらが置いてあった。演劇部に所属していた自分は、その電気部の人間と仲良くなり、学校でSFCを遊ばせてもらった。
その後、群馬の大学に進学することになり、少々自由に使えるお金も手にした。それで早速買ったのがSFCである。同時購入ソフトは「真・女神転生II」だった。そして、ほどなくして発売されたのが「ファイナルファンタジーVI(以下FF6)」である。
前回のレトロゲーム回顧録がFF3だったのに、なんでいきなり6なんだよと思う方もいるかもしれないが、上記のような理由でFF4とFF5は自力でクリアまでプレイしていない。なので、このシリーズからは割愛させてもらう。
ファイナルスチームパンクファンタジー的な何か。
FF6が従来のFFと大きく違っているのは、魔法が失われている世界観であるということだ。それにより、魔法を手に入れるプロセスがストーリーと密接に絡んだ「魔石システム」が生まれた。これは、7の「マテリア」に受け継がれていくことになる。
魔石は魔法のみならず、ステータスアップの手段でもあるので、非常に重要なアイテムだ。なんといっても、魔石なしではHPとMPしか上昇しない。魔石によるレベルアップボーナスはキャラクターの成長において必須の要素である。おかげで5同様にスーパーキャラを作れてしまうのだが…
一応ストーリー上の主人公はティナということになっているのだろうが、FF6はアンサンブルキャスト方式を採用し、各キャラクターにそれぞれ印象的なエピソードが用意され、それぞれお気に入りのキャラクターを見つけることが出来るようになっている。
なんといっても総勢14名(ゲストキャラも含む)も操作できるのだ。扱いが平等ではないとはいえ、こういう多数のキャラクターにバックグラウンドを用意するという方式は、今後のFFシリーズにも引き継がれていく。
戦闘時にはキャラクターごとに「オリジナルコマンド」が存在し、それがキャラの個性付けにも一役買っている。とくに、格闘ゲームがブームを巻き起こしていた時期でもあるので、マッシュのコマンドはまさに格闘ゲームのそれだったりする。入力判定はかなり甘いので、格闘ゲームが苦手な人もそれなりに技を出すことができた(はず)。
グラフィックスはそれまでのFFのような中世ファンタジー感のある雰囲気なのだが、そこを「魔導アーマー」と呼ばれるメカがのっしのっしと動きまわる。ゲームの冒頭で「ああ、いままでのFFとは少し違う」と思わせ、降りしきる雪の中炭鉱の町ナルシェに向かって歩くスタッフクレジット。SFCの機能をフルに活かした最高級のデモシーンが、プレーヤーを一気にゲームの世界に引き込んでいく。
シナリオはリニアといえばリニアなのだが、後半の仲間集めは完全に任意だし、進め方によっては仲間や大事な人間が死んでしまったりと、いろいろな展開が起こりうる。そういう意味では自由度が高いとも言える。
演出重視により傾いたイベント。
FFシリーズは、とくに4から映画的演出が使われるようになったが、6はSFC最後の作品ということで、かなり気合の入った演出が施されている。
初っ端の防衛戦もそうだが、いわゆるミニゲーム的な要素も多数存在しているし、オペラ座などの印象に残るが長いイベントシーンなどもあり、エンディングなどは各キャラクターのテーマソングが演奏されるという、まさに映画のスタッフロール的な壮大なものになっている。
ゲームを彩る音楽も名曲揃いで、とくに個人的に好きなのは「ロックのテーマ」「ティナのテーマ」「セッツァーのテーマ」「仲間を求めて」「死闘」「決戦」「蘇る緑」などだ。もちろんCDも買った。オープニングのBGMが、某動画のせいで「せーがー」と聞こえてしまうようになったのを除けば、FF6のサウンドは大好物である。
いろいろと致命的なバグも多いFF6であるが、個人的にはシリーズ前作品の中でもトップ3に入るくらい好きだ。結構やり込んだし、初めてクリアした時は本当に感動した。
いまではスマートフォン版のFF6がプレイできるので、もしまだやったことがないという人は是非やってみてもらいたい。
FF6の後、FFシリーズはプレイステーションにプラットフォームを移し、天野喜孝のデザインを貴重としたものから、野村哲也のデザインへと変化していく。そして、世界観も近未来を意識したものへと変貌していくことになる。
それはFFシリーズが「世界」に受け入れられるために必須の通過儀礼であるかのように語られる時もあるが、いまでも海外で人気ランキングを集計するとFF6が首位だったりする。
最新作のFF15もやはり近未来をベースとした世界観だが、個人的にはもう一度中世ファンタジー感の強いスタンドアロンのFFをプレイしてみたいと思わなくもない。
無理かな…