6月23日に英国でEU離脱を巡る国民投票が実施されます。

この投票結果がどちらに転ぶかは、僕にはわかりません。

経済の大混乱を招くことを重々承知しながら、感情論に振り回されて、英国の国民が離脱を選んでしまうリスクも、実はかなり高いと思います。

その反面、もし英国がEUに残留すると決まれば、一番恩恵をこうむるのは文句なく銀行株だと思います。

具体的にはバークレイズ(ティッカーシンボル:BCS)を筆頭に挙げるべきでしょう。

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同行は最近になって世界的に投資銀行業務を展開する野望を大幅に縮小しています。ルーツである英国内での伝統的銀行業務へと回帰しているわけです。

しかしそれはロンドンの金融街シティにおける業務がゼロになるというわけでは無いです。シティはヨーロッパ全体の金融サービスの「座敷貸し」をやっている関係で、英国のEU離脱というシナリオでは商売が減るリスクがあります。残留で最もメリットをこうむるのは、だからバークレイズなのです。

バークレイズのCEOはアメリカ人のジェス・ステーリーです。彼はJPモルガンのジェイミー・ダイモンの子分だった人であり、一時は「JPモルガンの次期CEO候補」と噂されたこともある人です。

つぎにドイツのドイチェバンク(ティッカーシンボル:DB)も、実は英国のEU残留でホッと胸をなでおろすと思います。

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なぜなら同行はシティに大きな投資銀行のオペレーションを持っており、グローバル・バンキングに対してコミットメントを持っているからです。

ドイチェバンクは大手投資銀行の中では最後まで債券トレーディングに傾斜した経営を堅持した銀行です。これは前CEOのアンシュー・ジェインがトレーダー畑の出身だったことが少なからず影響していると思います。

債券トレーディングのビジネスは、ドット・フランク法やHFT(高速トレーディング)により、どんどん旨味の無いビジネスに成り下がっています。その関係で、ドイチェバンクは最も痛手を受けた銀行だと言えます。

新しくCEOに着任したジョン・クラインはSGウォーバーグの出身で、イギリス人です。彼は金融法人を専門とするバンカーでした。シグムンド・ウォーバーグの番頭役を務めたヘンリー・グランフェルドや第二次世界大戦後ドイチェバンクを再興したヘルマン・ジョセフ・アプスを彷彿とさせる、沈思黙考型のバンカーです。

実は一昨日ドイチェバンクは年次株主総会を開催したのですが、ジョン・クラインの淡々とした現状認識と地に足が付いた再建計画は株主から喝采を浴びました。これは怒号が飛び交ったアンシュー・ジェインの仕切る株主総会とは様相が一変しました。

ロイズ・バンキング・グループ(ティッカーシンボル:LYG)は英国国内の個人や中小企業向けのビジネスが中心です。

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同行はイギリスにおける住宅ローンのマーケットシェアで首位を保っており、小口預金を集め、それを融資にまわすというシンプルなビジネス・モデルを堅持しています。

リーマンショックの際、業績を大きく落として英国政府から救済された関係で、現在でも政府が大株主になっています。いずれ政府の持ち株は売り出されると思うので、需給関係は悪いです。


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