沖縄県民は幾度、おぞましい事件に直面しなければならないのか。

 うるま市の女性(20)が遺体で見つかり、米国籍で元米兵の男(32)が死体遺棄容疑で県警に逮捕された。男は女性殺害をほのめかしているという。

 元米兵は米軍嘉手納基地で働く軍属である。現役の兵士ではないが、米軍基地が存在しなければ起きなかった事件だと言わざるを得ない。

 太平洋戦争末期に米軍が沖縄に上陸して以降、米軍統治下の27年間も、72年の日本復帰後も、沖縄では米軍人・軍属による事件が繰り返されてきた。

 県警によると、復帰から昨年までの在沖米軍人・軍属とその家族らによる殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪事件は574件にのぼる。

 事件のたびに県は綱紀粛正や再発防止、教育の徹底を米軍に申し入れてきた。だが、いっこうに事件はなくならない。

 全国の米軍専用施設の75%近くが集中する沖縄で、米軍関係者による相次ぐ事件は深刻な基地被害であり、人権問題にほかならない。これ以上、悲惨な事件を繰り返してはならない。そのためには、沖縄の基地の整理・縮小を急ぐしかない。

 95年に起きた米海兵隊員らによる少女暴行事件を受けて、全県で基地への怒りが大きなうねりとなった。その翌年、日米両政府は米軍普天間飛行場の返還で合意したはずだった。

 だが20年たっても返還は実現せず、日本政府は名護市辺野古沿岸に移設する県内たらい回しの方針を変えようとしない。

 日本の安全に米軍による抑止力は必要だ。だがそのために、平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされていいはずがない。

 たび重なる米軍関係者による事件は、そうした問いを日本国民全体に、そして日米両政府に突きつけている。

 日本政府が米政府に再発防止を強く求めているのは当然だ。来週、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のために来日するオバマ大統領にも、安倍首相から厳しく申し入れてほしい。

 だがそれを、一連の外交行事が終わるまでの一時しのぎに終わらせてはならない。

 長く県民が求めてきた辺野古移設の見直しや、在日米軍にさまざまな特権を与えている日米地位協定の改定も、放置されてきたに等しい。

 地元の理解のない安全保障は成り立たない。こうした県民の不信と不安を日本全体の問題として受け止め、幅広く、粘り強く米側に伝え、改善の努力を始めなければならない。