先週、東京の国分寺市で、自転車に乗った女性がクルマと接触し、転倒したはずみで、おぶっていた子供が亡くなるという痛ましい事故が起きています。この事故については、各メディアが大きく取り上げていました。一部のメディアの記事を引用しておきます。
車と衝突し母親の自転車転倒、おんぶされていた男児死亡
6日午前10時ごろ、東京都国分寺市東戸倉2丁目の都道で、7カ月の息子を背負った女性の自転車と乗用車が衝突して自転車が転倒し、男児が頭を強く打って死亡した。女性も軽傷を負った。警視庁は、乗用車を運転していた20代の女を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)容疑で現行犯逮捕し、容疑を過失運転致死に切り替えて調べる。
小金井署によると、現場は片側1車線で、信号や横断歩道のない直線道路。道路を横切ろうと渋滞中の車列の間から出た女性の自転車が、左側から来た乗用車と衝突したという。(2016年5月6日 朝日新聞)
子をおんぶして自転車、法的問題は? 安全面どうすれば
東京都内で、乳児をおんぶした母親の自転車と乗用車が衝突し、乳児が死亡する事故が起きた。便利だが、一歩間違えば命の危険も伴う自転車。子連れで乗る時、何に気をつければいいのだろうか。
車と衝突し母親の自転車転倒、おんぶされていた男児死亡
東京都国分寺市の住宅街を貫く片側1車線の幹線道路。バスやトラックが行き交う場所で、6日午前10時ごろ、事故は起きた。
警視庁小金井署によると、近くに住む母親(33)が7カ月の男児を背負い、自転車で横断歩道のないところを横断中に、狛江市の介護職員女性(25)の乗用車と衝突。男児は背中からは落ちなかったが、母親が倒れた際、頭を打ちつけたとみられる。ヘルメットはしていなかった。自転車に大きな損傷はなく、母親も軽傷という。
署は、乗用車の女性を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで現行犯逮捕。東京地検立川支部は8日、処分保留で釈放した。
事故を巡り、ネット上では「赤ちゃんをおんぶして自転車に乗るのは非常識」といった批判も。だが、署は「男児を背負って自転車を運転していたことに法的な問題はない」とする。乗車人員などの規則は都道府県によって違うが、都道路交通規則は、16歳以上がバンドなどで6歳未満の幼児を背負って乗ることを認めている。
都市部では、移動に欠かせない自転車。どうやって安全に乗るのか、親たちの悩みは尽きない。
現場近くで、1歳7カ月の長男を抱っこして保育園から帰る途中だった薬剤師の女性(31)は「ひとごととは思えない」と話す。事故当日、友人たちとLINE(ライン)で「怖いね」「母親の後悔を思うと胸が痛い」とやり取りしたという。(以下略 2016年5月12日 朝日新聞)
赤ちゃんおんぶして自転車はNG? 転倒「死亡事故」きっかけに論議起きる
自転車の女性が車と接触して転倒し、おんぶしていた赤ちゃんが亡くなった事故をめぐり、テレビやネット上で自転車の乗り方が論議になっている。
「赤ちゃんおぶって自転車はないわ」「普通にこけて転倒しただけでも危ない」
東京都の道路交通規則では認められているが...
東京都国分寺市内の府中街道で2016年5月6日に事故が起きると、ネット上では、こんな意見が相次いだ。報道によると、自転車の女性(33)は、信号機や横断歩道のないところで信号待ちしていた車の間をすり抜けて渡ろうとしたところ、左から来た乗用車と接触した。その弾みで転倒し、おんぶしていた生後7か月の男児が頭を強く打って死亡した。女性も軽いケガをした。
乗用車を運転していた女性(25)は、過失運転致傷の現行犯で警視庁に逮捕され、過失運転死傷の容疑に切り替えて調べが進められている。このことが報じられると、ネット上では、乗用車の運転者に対して「うわあこれで逮捕かよ」といった同情が書き込まれるなど、赤ちゃんをおんぶしながら自転車を運転していたことについて、様々な意見が相次いだ。
乳幼児をおんぶして自転車に乗ることについては、実は、都の道路交通規則の第10条で認められている。16歳以上の人なら、6歳未満の子供1人を子守バンドなどで背負うことができるというものだ。幼児用座席にも、1〜2人を乗せることもできる。
ただ、道交法の第63条の11では、保護者は、13歳未満の子供を自転車に乗せるときは、ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならないとある。自転車の女性は、息子にヘルメットを着用させていなかったという。とはいえ、1歳未満の乳児がヘルメットをするのは現実的ではない。
ヘルメットの対象者は1歳以上から
日テレ系の情報番組「スッキリ!!」では、5月9日朝の放送で、自転車用ヘルメットについて、サイクル用品店の声を紹介した。それによると、乳児用のヘルメットというものは製造されていないといい、ヘルメットの対象者は1歳以上からだというのだ。
また、番組で聞いた専門家は、乳児に数百グラムはあるヘルメットをかぶらせるのは、首の負担になり危険だと指摘していた。そして、もしヘルメットなしでおんぶすれば、事故に遭わなくても、転ぶ可能性があって危険なため、ベビーカーを使うべきだとしていた。
今回の自転車女性は、何か事情があって、ベビーカーを使わず、男児をおぶっていた可能性はある。また、女性は、T字路の側道から府中街道に出ており、右に曲がるときなど自転車で横断してもいい場所ではあった。しかし、子供の命が最優先であることには変わりがない。
都の交通安全課では、「首がまだ十分に据わらないような赤ちゃんは、普通は親御さんが自転車に乗せないと思います。幼児用座席についても、取っ手を握れるようになるまで乗せるべきではないでしょう」と言っている。(2016/5/9 J-CASTニュース)
この事故については、多くのメディアが報道し、検証するような記事も出ています。わずか生後7ヶ月の子供を一瞬にして失ってしまった母親のことを思うと胸が痛みます。悲しい事故で、母親を責める意図はありませんが、これを教訓として生かすためにも、原因について考えてみることは意味があるでしょう。
記事にあるように、赤ん坊をおぶって自転車に乗ることが非常識であるとか、ヘルメットをさせていなかったことが問題、といった意見もあるようです。私は現場を見たわけではないので、あくまで記事の記述からの推測に過ぎませんが、一番の問題は渋滞するクルマの間をすり抜けて横断したことではないでしょうか。

接触することになったドライバーにしてみれば、さほどスピードを出していなくても、突然クルマの陰から飛び出してきた自転車を避けるのは困難だと思います。言うまでもなく、母親の非常に危険な行為です。深く考えずに渡ってしまったか、急いでいたのか、いずれにせよ軽率で子供をおぶってする行為ではないと思います。
今さら言っても仕方がありませんが、少し先が交差点で横断歩道もあったようですから、そこを通るべきだったのは間違いないでしょう。せめて、渋滞の列をすり抜けるときに、いったん止まって左側を確認していれば防げた可能性は高いのではないかと思います。
二番目の記事に、『都市部では、移動に欠かせない自転車。どうやって安全に乗るのか、親たちの悩みは尽きない。』とありますが、私は違うと思います。親たちの悩みが尽きないのではなく、安全に悩むどころか、気にもとめていない親のいることが、このような事故が起きる根底にあるような気がします。
渋滞のすり抜けに限らず、子供を乗せた親の危険な行為は、日常的に見かけます。逆走や一時不停止、安全の不確認などは当たり前のように見ます。このような行為の危険性を理解していないか、全く気に止めていないように見える親も少なくありません。そのことこそが問題ではないでしょうか。
逆走していれば、例えば交差点や路地の角などで、建物で見通しが悪い場所ならば、正しく左側通行している人と出会い頭に衝突しかねません。何も考えずに右側走行する母親を見るのは日常茶飯事です。転倒するだけでも、赤ん坊には大きなダメージが及び、今回の事故のように死亡に至っても全く不思議ではありません。
一時停止もせず、安全確認も不十分なまま、狭い路地から飛び出してくる若いお母さんを目撃することもあります。ふらつくので止まりたくないのかも知れません。しかし、タイミングが悪ければ、即事故になるのに、よく飛び出せるものだと驚きます。スマホを見ながら乗っているという、驚くような母親を見たこともあります。

子供が死傷しても、特に自転車同士や歩行者との事故だったりすると、ほとんど報道されませんから、そのような事故も起きているのではないでしょうか。十分防ぐことが可能なのに、親があまりに安全に無頓着なために起きる事故も少なくないように思えます。少なくとも無頓着に見える親がいるのは確かです。
幸いにして、今まで事故になっていないだけであることに気づいていません。転倒するだけでも子供が命を落しかねません。そのような自転車の乗り方をしている親は少なくないのではないでしょうか。つまり、親たちの悩みが尽きないのではなく、親たちが安全のことなど気にもとめず、危険に気づいていないのです。
中高生の頃から、逆走や並走、一時不停止など当たり前に乗ってきたので、大人になって、子供が生まれても、自分の自転車の乗り方の危険性に、思いが至らないのもあるでしょう。もちろん、子供が出来て、慎重に乗ろう、面倒でも安全を優先しようという親も多いとは思いますが、そうではない親も少なくないように思います。
都市部で自転車は、子育てする母親にとって必要不可欠だと思います。たとえ、おぶって乗ったとしても、ルールを遵守し、安全な走行をしている限りは、必ずしもリスクが高いとは思いません。実際にそうして自転車に乗っている母親はたくさんいます。自転車に乗るのが悪いとは責められないでしょう。
最近は、子育て支援で、待機児童の問題が話題になります。働く母親にとって切実な問題ですし、「日本死ね」と悪態をつくブログが話題になりましたが、その気持ちも理解できます。政府や自治体は、待機児童の解消に努めることが求められています。しかし、それでも子供の生死にまで関わる問題ではありません。

その意味では、子供の安全の確保は、より喫緊の課題です。自転車の安全な走行についての認識が不足していることが、幼児の死亡につながっています。子供の死亡に直結する危険があるとは思っていない親も大勢いると思われます。潜在的に子供の命が危険に晒されているわけです。
さすがに、母子手帳に自転車の安全な乗り方を書くわけにはいかないでしょうけれど、幼い子供を持つ親への注意喚起を、なんらかの方法で強化すべきではないでしょうか。もちろん、急に身につくものではなく、習慣になっている部分も大きいですから、親になる前から安全な乗り方を実践させることも必要でしょう。
何も考えずに渋滞の列をすり抜けたり、安全を確認しなかったり、一時停止しない行為が、このような悲劇に直結することを警告すべきです。実際の事例を見せ、痛ましい事故が起きるリスクを実感するならば、子供を乗せた母親の不注意な行動、安全に無頓着な態度は、もっと改まっていくに違いありません。
何気なく右側走行したり、一時停止を疎かにしたり、安全確認を怠ったり、交通ルールを無視する行為が、いかに危険で、子供の死亡につながりかねないか、今までは単に運が良かっただけか、いつ自分の身に起きてもおかしくないか、ということを理解させる必要があります。
そのことを、本当に身に染みて理解させれば、痛ましい事故は減らせるはずです。動画を使うなど、よりリアルに実感させるような、効果的な啓発活動が是非必要なのではないでしょうか。待機児童問題なども、もちろん重要ですが、まず子供の命を守るための対策が必要な気がします。
舛添都知事は、就任時に都庁の職員に、西郷隆盛の言葉を引き、『上に立つ者は 驕りや贅沢を戒め 出費を抑えて質素を旨とし 仕事に励んで国民の手本となり 人々がその仕事ぶりや生活を気の毒に思うくらいにならなければ 政令が行われるのは難しい』と訓示しするなど、さんざん偉そうなことを言っていたくせに、自分は都の経費使い放題の上に、家族旅行の費用を政治活動として経費にするなどセコすぎます。こんな人間だったんですね。