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安倍政権を支える右翼組織「日本会議」の行動原理(下)

「日本会議の研究」著者・菅野完氏インタビュー

ダイヤモンド・オンライン編集部
2016年5月20日
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 一方、日本会議周辺の人々は、そういうことはまったく思っていない。地方の愛国おじさん・愛国おばさんというのは、何らかの正業を持って、中の上くらいの生活をしてて、地域社会に溶け込み、運動となると手弁当で、一歩後退二歩前進が当然とばかりに、地道に市民運動をやっている。

 それでいて、運動手法は本当にピシッとしている。書類の作成、納期の守り方、定量目標の建て方、実に見事です。合意形成では、もめないよう、皆がちょっとずつガマンするように持っていき、気づいたら根回しをした者がおいしいところを全部持っていく…という感じで、とてもサラリーマンっぽいんです。

 もちろん、日本会議の幹部のように、一度も就職せず大学卒業以来政治活動だけしかしたことのない「プロ市民」も左翼以上に多いですけどね。

安倍晋三は21世紀の「そうせい候」

──ところで、歴代の自民党総裁にはずっと働きかけ、地道な右翼活動をしてきた日本会議が、なぜ安倍政権になってここまで深く食い込むことができたのでしょうか。

 いろんな説が成り立つか思いますが、僕が着目しているのは安倍晋三という政治家の、「あまりに主義主張に整合性が取れない」という特徴です。

 安倍首相はそれまでの総理経験者と比べると、とにかく党内基盤が弱すぎる。幹事長は経験したけれども、閣僚経験がろくにないまま、急に総理大臣になっています。あんな人は他にはいない。

 最近僕は、彼は21世紀の「そうせい候」なんじゃないかな、と考えています。

 幕末の長州藩のお殿様・毛利敬親って、長州藩で繰り広げられる政争で佐幕派が勝ったら「そうせい」、尊皇派が勝ったら「そうせい」と、下から上がってくる献策に、イエスしか言わなかった。安倍さんにもそれを感じるんです。すべての政策が総花的でしょう。その最たるものがアベノミクスだと思います。3本の矢と言いますが、財政出動で行くのか、緊縮路線なのか、増税なのか減税なのか、お金を刷るのか刷らないのか。結局、全部やる。総花的なんですよね。これは経済政策以外でも同じです。そんな、「なんでも採用しちゃう路線」のなかに、日本会議も入っているということなんじゃないかな、と。

 それを悪く言えば、「彼には主体性がない」となるけれど、僕はそれは彼一流の使命感なんだろうなと思っています。思想うんぬん関係なく、家系的に子供の頃から今の立場になると思って生きてきたでしょうし、「リーダーはどうあるべきか」と帝王学的なことを周りから教育もされたでしょう。彼はよく「自分は最高責任者だから」と言いますが、まさに最高責任者として、上がってきたものは全部拾うわけです。下からの献策を全部採用しちゃう。

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