捕鯨文化 日本遺産に認定
国内外へアピールの好機
山と海の2大遺産エリアへ
- 2016/4/26
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文化庁が昨年度から実施している「日本遺産」の平成28年度の認定が19日、同審査委員会によって行われ、和歌山県は太地町・那智勝浦町・新宮市・串本町の4市町の捕鯨文化に関わるストーリー「鯨とともに生きる」が認定を受けた。熊野灘地域において、古式捕鯨が産業として定着・発展した背景と、今に受け継がれている捕鯨文化にまつわるストーリーが評価を受けての認定となった。
日本遺産は、地域の歴史的な魅力や特色を伝えるストーリーを、有識者6人で組織される委員(委員長:稲葉信子筑波大学大学院教授)が審査・認定する。同事業は文化財群を地域が主体となって総合的に整備・活用し、国内外へも戦略的に発信することで、地域活性を図ることを目的に創設された。本年度は、全国から67件の申請があり、うち19件が認定に至った。
和歌山県からは同件に加え、和歌山城(和歌山市)や藤白神社(海南市)を主な文化財とする「御三家紀州徳川家の『父母状』を継承する街」も申請されたが、今回の認定はならなかった。なお文化庁では、4年後の東京五輪までに認定件数を100件程度まで増やすとしている(現在37件)。
伝統芸能を大勢の人に
「鯨とともに生きる」では、「捕鯨の祖・和田頼元墓」(県史跡)や「太地のくじら踊」(県無形民俗文化財)など太地町の10件の文化財を中心に、那智勝浦町、新宮市、串本町からも3件ずつの文化財がストーリーを構成。熊野灘沿岸地域では、江戸時代に入り、熊野水軍の流れを汲む人々などが捕鯨の技術や流通方法を確立し、以後、捕鯨を中心にした生活・文化圏を形成してきた。現在でも、当時の面影を残す旧跡が周辺地域に点在し、祭りや伝統芸能、食文化が連綿と受け継がれている点などをアピールした。
仁坂吉伸知事は「熊野地域が『世界遺産の紀伊山地』と『日本遺産の熊野灘』という山と海の2大遺産エリアとなり、今まで以上に熊野地域に多くの観光客の皆さまにお越しいただけるようになれば」とコメントしている。
県では「日本遺産」ブランドの確立と認知度向上のため、県、県観光連盟、関係市町、各市町観光協会、三輪崎郷土芸能保存会などで構成される協議会の設立を5月に予定しているという。
また、この認定登録により、多言語ホームページやパンフレットの作成、ボランティア解説員の育成、国内外でのPR活動に助成が得られる。
三輪崎郷土芸能保存会の濱口仁史会長は「大変ありがたい話でうれしい。今まで以上により広く、三輪崎の伝統芸能である鯨踊を大勢の人に知ってもらえるきっかけになると思う」と話している。