韓国政府は重債務を抱える企業の再編を推進している。だが硬直した労働市場のためフルタイムで再雇用される可能性は小さく、社会保障が限定的な同国で、政府の政策は数万人の失業者を生むとみられている。

  失業者の大半は造船所と港湾が柱の南東部沿岸の工業地帯で発生する見通しだ。これら重工業は数十年にわたり韓国経済の成長をけん引してきたが、世界の成長鈍化や過剰生産能力、中国との競争激化により赤字を重ねるようになった。債権者の銀行や政府は資金繰りを支援する条件として、企業側に人員削減と赤字資産の売却を要求している。

  朴槿恵大統領は先月の閣議で、痛みを伴う再編の必要性を強調。政府の優先的な再編対象は経営の苦しい造船や海運業界だ。大宇造船海洋は2018年末までに従業員の約1割に当たる1300人前後の削減を計画。現代重工業は幹部職の数を25%減らした上、早期退職を募集すると明らかにした。

  大手企業の縮小は下請け企業に降りかかるため、失業者数は膨らむ見込みだ。韓国造船海洋プラント協会によると、国内造船業界の従業員数は14年末時点で約20万5000人。ハナ・フィナンシャル・インベストメントのアナリスト、イ・ミソン氏は今月のリポートで、造船業界の10-15%が職を失う公算が大きいと指摘。同業界は昨年の平均月収が450万ウォン(約41万5000円)と他業種に比べて高いため、失業増加は消費の下振れと地方経済の圧迫要因になりかねないとの見方を示した。

  韓国でフルタイムの正社員という立場を失うことは、すなわち貧困への転落を意味することが多い。企業は経験ある人材の中途採用よりも、若い人材を採用して鍛えていくことを好む。現代経済研究院の研究フェロー、イ・ジュンヒョプ氏によると、こうした状況のためいったん解雇された労働者の多くは保険や年金の保障がない日雇いや低賃金、派遣などの業務でしか働く機会がない。

  2009年の双竜自動車再編で解雇された約2600人のうちの1人、キム氏(45)は「以前と同様の収入と社会保障のある新たな職を見つけられる可能性は1%程度」と話す。同氏は現在、昼は小売業での派遣業務、夜は運転手と二つの仕事をこなすが、それでも収入は以前の半分だという。正社員の失職は「水も持たずに砂漠に放り出されるようなものだ」と語った。

原題:Mass Layoffs Loom in South Korea as Corporate Revamp Starts(抜粋)