2016-05-20 Uber なんて要らないもん!
先月のこの呟き(↓)について
2020年、東京オリンピックの後、世界が認識する日本のイメージとは「Uberも使えない遅れた都市」っていうイメージなんだろうな。
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2016年4月30日
従来型のタクシーサービスと比べた時の Uber(的なるサービス)のメリットは、
1)行き先を言わなくていい
流しのタクシーと異なり、Uber ではタクシーを呼ぶ際に行き先をスマホの地図(など)で指示します。なので、やってきた車は最初から、この客をどこに連れて行けばよいのか理解しています。
乗り込んだ客から行き先を聞いた後、「近すぎる!」「そんなとこまで!?」や、「それって反対方向です・・」と言った運転手側の戸惑いも無くなるし、
個人宅など説明しにくい目的地について、あれこれ説明する手間も省けます。
2)ナビがルートを決める
運転手が道に詳しい必要はありません。スマホ + GPS = ナビがすべて教えてくれます。運転手が道を知らなくてイライラすることもないし、
反対に、運転手から「どの道を行きますか?」とか「○○通りから○○坂を下っていけばいいですか?」などと聞かれ、「よく道がわからないからタクシーに乗ったのに・・・」と戸惑うこともありません。
加えて、道に不慣れな観光客に対しても、代金をつり上げるため意図的に大回りをするといったことは不可能になります。Uber 側もどの車がどこを走行しているのか把握しているので、万が一のことがあれば後からクレームを付けるのも簡単です。
3)お金を払わなくていい
最初に登録したクレジットカードから代金が引き落とされるので、お金を払う手間が省けます。ひいては、お金自体をあまり持ち歩かなくてよくなります。
今や公共交通機関もコンビニも電子マネーの時代。高い物はクレジットカードで買うし、現金自体の使用機会が減っています。
そんな中、「数千円以上」を現金で払う機会として最近もっとも多いのがタクシー代を払う時です。これが無くなれば、キャッシュレス社会に大きく近づく。
もちろん「一万円札でいいですか?」「えっ、お釣り無いです」みたいな意味不明なやりとりも無くせます。
4)レシートの管理が簡単
タクシーレシートを受け取って経費請求してる人も多いと思いますが、レシートを受け取る必要も無く、日時や場所、値段といったすべての使用記録がデジタルで残るわけですから、経費請求の手間も大幅に減らせます。
レシート無くしちゃって自腹を切る、みたいな哀しいことも起こらない。
5)運転手の質とサービスがよくなる
流しのタクシーって、乗り込んで話をするまで全くその“質”がわかりません。大事な日に「はずれ」の運転手に当たってイライラさせられた、という経験がある人も少なくないはず。
Uberなら、運転手のレビューも見られるし、レビューがどれほど顧客の選択に影響するかは、すべての運転手が理解しているため、今のように客側が「○○までお願いします」→ 返事なし みたいな非常識なことも起こらなくなるでしょう。
もちろんドライバーも(代金を受け取るため)銀行口座等を Uber に登録していますから、本人確認もばっちりできています。
6)辺鄙な場所でも呼びやすい
街中どこでもタクシーが走っている都心部と異なり、地方に行くとタクシーは駅前にしかいません。東京の郊外でも同じかな。
自宅にタクシーを呼ぶならともかく、土地勘もなく、ランドタワーでもない場所に(電話で場所を説明し)タクシーを呼ぶのは大変ですよね。現在位置がわかってるスマホで呼べるメリットはとても大きい。
7)一般的に料金がタクシーより安い
そんなに大事なメリットだとは思いませんが、特に中距離以上を乗った場合、タクシーより安くなる傾向があるようです。ただし需給によるので、今後は特に、雨の日などは高くなる可能性もあります。
8)その他
地域によっては車がタクシーよりキレイ、クレジットカードのポイントが貯まる、など、細かいメリットもあるみたい。
★★★
と、山ほどのメリットがありながら、東京に住んでて「Uber 使えなくて不便だー」みたいな意見は、ほぼ聞かないでしょ?
友達や上司とそんな話したことある人いる? 東京で働いてる日本人同士では、まずそんな話にならないよね。
なぜなら、
「東京に住んでる日本人にとっては」東京のタクシーシステムは、別にそこまで不便じゃないから。
タクシーなんてそこら中で走ってるし、ちょっと歩けばランドマークがあってタクシー乗り場がある。そもそも地下鉄もバスも私鉄& JR も発達してるから、タクシーに乗る機会自体が少ない。
タクシーを呼ぶ場合も、住所を言えば先方が地図上ですぐ確認してくれる。よく乗る人の場合、どの道を行くか聞かれる前に自分で道を説明できるくらい地理に明るい。
こういう状態だと「 Uber が使えたら便利だろうけど、まあ今のままでもそんな困ってないし」みたいな話になっちゃう。
これ、実は地方に住んでる日本人も同じで、地方在住の人って基本、自家用車を持ってるからタクシーなんて「もう何年も乗ったことがない」って人も多いはず。
するとこちらも「 Uber なんて無くても特に困らないよね」的になる。
でもね、
自分が観光やオリンピックのために日本にやってきた外国人だと考えてみてください。
東京で地下鉄の乗るのも、めっちゃ複雑で難しすぎる。タクシーに乗りたいけれど・・・
タクシーを止めても行き先を日本語で説明できない
どの道がいいか、聞かれてももちろん全くわからない
お金を払う時も、見慣れない通貨で支払うのは大変。このコインは何円??
料金が足りないと両替が必要になる。でも値段の目処もわからないから、今持ってるお金でタクシー乗っても大丈夫かどうかさえわからない。
タクシーを呼ぼうにも、電話で現在位置を説明するなんて無理
忘れ物をしても、乗ったタクシーにどう連絡をとればいいのか、皆目不明
地方でタクシーのいない場所=駅以外の場所では途方にくれる
こういう人達にとって Uber 的なサービスは、日本人にとってとはレベルが違うほど貴重な「神サービス」なんだよね。
でも国土交通省は Uber の全面解禁は「絶対にやりたくない」
なので冒頭に紹介したように、2020年 日本は「我が国はごく一部の特区的なエリアを除き、Uber も使えない恐ろしく時代遅れな国であります!」と世界に向けて高らかに宣言する予定。
オリンピックに来てくれ、その後、日本の地方をあちこち回って観光してくれる人達のツイッターやフェースブックを通じ、強力に「日本はそういう国」というメッセージを拡散させる観光庁 渾身の SNS 戦略。こわすぎます。
まっ、でもそれはそれでいい。
だって実際そういう国だし。
そういえばタクシー業界には、「東京オリンピックの時に電気自動車のタクシーをたくさん走らせて世界を驚かせよう」みたいなプランがある見たいですけど、
それ、バブルの頃に日本のテレビメーカーが「超超超ハイビジョン」みたいな高画質テレビを国際見本市でプレゼンして「どうだ、驚いたか!?」とか言ってたのと同じよね。
何十年も前から日本は、「スゴイ技術」ではなく「消費者への大きな価値」こそが大事なのだと全く理解できてない。
★★★
じゃっ、最後はクイズで締めくくりましょう。
「自分達は何も困ってない。でも、海外から来た人はとても困るだろう。せっかく来てくれてるのに、それはヒドいしマズい。東京に不慣れな人、日本語が話せない人も困らないようにしてあげようよ!」
と感じる気持ちをなんと呼ぶでしょう?
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「自分達は何も困ってない。でも、海外から来た人はとても困るだろう。なんとかしてあげようよ!」と感じる気持ちは、日本語で
↓
お・も・て・な・し
2020年、世界は日本の「おもてなし」のレベルに、驚愕することでしょう。
そんじゃーね。