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防災拠点 耐震化は待ったなしだ

 熊本地震では、市や町の庁舎や病院など重要な防災拠点の損壊が相次ぎ、応急対応に支障が出た。

     熊本県宇土市の5階建て庁舎は、4月16日の「本震」で4階の天井が崩れた。熊本地震で庁舎が使用できなくなった自治体は、八代市や益城町など5市町に上る。

     患者の命に直結する病院の被災も深刻だった。災害拠点病院だった熊本市民病院は、「本震」で壁などに亀裂が入り、病院機能の維持ができなくなった。約200人の入院患者は防災ヘリコプターや救急車で緊急転院した。40を超える医療機関が一時、正常運営できなかった。

     総務省消防庁は、地震などの災害発生時に応急対策の実施拠点となる公共施設の耐震化進捗(しんちょく)状況を毎年調査している。避難所として利用される学校や体育館のほか、警察署や消防署、病院、自治体庁舎などが含まれる。2014年度末で、防災拠点の耐震化率は全国で約88%だ。

     ただし、自治体庁舎の耐震化率は最も低く約74%にとどまる。病院も約85%で平均を下回る。

     自治体庁舎の耐震化工事は、財政上の理由で優先度が低く、後回しにされることが多いという。

     だが、熊本地震の例をみれば、被災者の生活再建の第一歩となる罹災(りさい)証明書の発行が益城町などで大幅に遅れている。他の市町でも役所機能が分散され、被災者はあちこちの窓口を訪ね歩かねばならない。高齢者の負担は小さくないだろう。

     大規模災害直後に行政が機能不全になることのダメージの大きさが分かった。今回の教訓を踏まえ、自治体は予算を優先的に確保し、庁舎の耐震化を急ぐべきだ。

     耐震化工事に当たっては、補助金など国の財政支援策がある。支援額の拡充はもとより、自治体が利用しやすい仕組みについても知恵を絞り、国全体で耐震化を後押ししたい。

     1981年に施行された現行の耐震基準は「震度6強から7の地震が起きても、人命に危害を及ぼすような倒壊をしない」と定める。この基準は一般住宅も防災拠点も同じだ。2度の震度7が発生した今回の地震では、現行耐震基準を満たした益城町役場も被害を受けた。防災拠点の耐震基準強化の必要性も検討課題だろう。

     庁舎が被災しても、被災者への対応に遅れが出ないことが肝心だ。被災直後も業務を遂行するために作るのが事業継続計画(BCP)だ。計画では庁舎の代替施設や、職員の招集体制などを事前に決めておく。

     首都直下地震に備え、中央省庁で策定が進むが、地方自治体は遅れている。庁舎が利用不能となった宇土市や益城町はBCPがなかった。全国共通の課題だ。策定を急ぎたい。

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