世界最大のスポーツの祭典を呼び寄せた成功の陰で金銭にまつわる不正があったのか否か。

 2020年東京五輪・パラリンピックの招致活動に、疑惑が投げかけられている。

 日本オリンピック委員会(JOC)は、第三者の弁護士を含む調査チームを発足させることを決めた。

 五輪の開催国として、不正の疑惑に対し厳正に向き合う責任がある。招致を推進してきた政府も積極的に協力して、解明を進めるべきだ。

 疑惑は、フランスの検察当局が捜査を始めたと公表して表面化した。日本の招致委がシンガポールの顧問会社へ支払った約2億3千万円が焦点である。

 その会社は、ロシアの禁止薬物使用の隠蔽(いんぺい)に関わった疑いがもたれている国際陸連前会長の息子と関係が深いとされる。東京五輪が決まった翌年、会社は消滅した。

 招致関係者は、正当なコンサルタント業務の対価だったとして、疑惑を否定している。

 だが、具体的にどんな業務だったのか、その内容が見えない。契約上、相手方との守秘義務があり、明かせないというが、2億円超を払った妥当性は吟味されねばなるまい。さらに、その大金を会社が実際に何に使ったのか、調べる努力が必要だろう。

 国会では、この会社の選定が客観的なものだったのかどうかについても疑問が出た。

 会社の人物から売り込みがあったとされるが、契約する際、招致委はJOCのマーケティングなどを請け負っている広告会社の電通に相談した。電通は、契約に値する人物である旨を返答したという。

 電通にも疑惑の解明に協力してもらいたい。契約に値する人物と判断できた根拠は何だったのか。業績などが明確になるだけでも参考になる。

 五輪に限らず、国際スポーツ界では多額の金銭が動き、多くの権限をもつ国際組織などにしばしば不正のうわさが立つ。コンサルタントの関与が疑われることもあるが、その活動の実態はベールに包まれている。

 国際サッカー連盟の汚職や、ロシアの薬物問題でも金銭にまつわる問題が露呈し、近年のスポーツ界は不祥事続きだ。

 来週の主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、スポーツにおける腐敗の問題も議題に含まれる。

 議長国として、スポーツ大会や組織運営の浄化と信頼回復に向け、率先して取り組んでいく姿勢を示さなくてはならない。