世界トップクラスの囲碁棋士、李世ドル(イ・セドル)九段(33)が韓国棋院のプロ棋士会を脱退した。李世ドル九段は17日、ソウル市内の63スクエアで行われた韓国囲碁リーグ開幕式でプロ棋士会のヤン・ゴン会長に会い、あらかじめ用意してきた脱退届けを直接手渡したことが分かった。李世ドル九段の実兄で、マネージャー役をしてきた李相勲(イ・サンフン)九段(41)も一緒に脱退届けを提出した。
李兄弟は棋士会を脱退しても棋士生活はこれまでと変わらず可能だと考えている。2人は脱退の理由について「親睦団体に過ぎないプロ棋士会が不合理な条項で棋士を束縛する慣行から抜け出そうというもの。韓国棋院のメンバーとしての棋士までやめるという話ではない」と述べた。しかし、棋士会に属さずに韓国棋院所属で活動できた棋士はこれまで1人もいなかったことから、2人の構想は韓国棋院との衝突につながる可能性が非常に高い。
李世ドル九段側が棋士会の規定の中から挙げた問題のある条項は▲棋士会脱退時、韓国棋院主催の棋戦には一切参加できない ▲棋士たちの収入から3-5%の積立金を一律に控除する、の2点だ。積立金については、退職時に慰労金の上限が4000万ウォン(約370万円)に決められており、高所得の棋士にとっては特に不満の種となっていた。これらの条項で折り合いが付かなければ、李世ドル九段側は訴訟に頼る意向を見せている。
しかし、李兄弟は表向きは「韓国棋院との衝突を望まない」と言っている。「外国主催大会出場の収益のうち10%を納付する棋院発展基金など、棋院のほかの方針には、ほぼそのまま従うつもりだ」ともしている。
今回の事態が発生した根本的な原因としては、棋士会という組織に対する法的根拠や機能が明文化されていないことが挙げられる。韓国棋院の定款にはプロ棋士会について「所属棋士の品位向上と気力研磨を促進し、本院の運営に参加させるために棋士会を置く」とたった1行出てくるだけだ。組織の法的地位や権利・義務に関する言及はどこにもない。李世ドル九段側は「タレント協会や歌手協会のように、棋士会も単なる親睦団体なので、加入や脱退は自由だ」と話している。棋士会に対する認識が180度異なるということだ。
「所属棋士20-30人で運営されていた時代の棋士会運営システムを、300人を超えた今でも踏襲しているから問題が出る」という声も致し方ない。「今回の李世ドル九段側の問題提起を批判するばかりでなく、韓国棋院の古い規定を現実に合わせて整備する機会にしなければならない」という意見が多いのも、このためだ。
困惑は韓国棋院よりも棋士会の方が大きそうだ。李世ドル九段の脱退を許せば、その比重から見て打撃が大きすぎる上、一部棋士が同調して脱退が相次ぐことも懸念されるためだ。だが、脱退に反対するにしても名分や背景が十分でない。ヤン・ゴン会長は19日午前に棋士代議員会を招集し、対策を話し合う予定だが、激論が予想される。