三菱自動車で発覚した燃費データに関する不正が、軽自動車最大手のスズキに飛び火した。

 国の定めと異なる方法で燃費測定の元データを出していた。対象は他社への供給分も含め全車種の210万台強に及ぶ。

 自動車各社は燃費や環境性能、価格を巡って激しく競っている。消費者にメリットをもたらす原動力でもあるが、ルールを守っていないのでは何をかいわんや、である。

 なぜ法令が無視され、見過ごされてきたのか。不正を招いた原因を根本まで立ち返って検証し、しっかりと説明するべきだ。それが再発防止への出発点である。

 三菱自を含む一連の不正で明らかになった手法は、大きく二つある。実測したデータの改ざんと、データを出す方法が国のルールに従っていないケースだ。三菱自の不正が両方にまたがるのに対し、スズキは後者にあたる。

 屋外のテストコースで実際に車を走らせる決まりなのに、屋内でブレーキやタイヤなど装置別に測ったデータを積み上げていた。テストコースが海に近く、近年は車の軽量化で強風の影響を受けやすくなった。実走データのぶれが大きくなり、それを補うために装置別のデータを使い始めたという。

 スズキは記者会見で「燃費を良くしようという意図はなかった」とデータの改ざんを否定し、三菱自との違いを強調した。しかし、ルールを守っていなかった事実は動かない。不正がほぼすべての車種に及んで社長が辞任を表明した三菱自とともに、法令を守っている他のメーカーや、公正な競争を前提に商品を選んでいる消費者は納得しないだろう。

 スズキは「燃費を測り直したが誤差の範囲内だった」とするが、国土交通省は根拠となるデータを提出するよう求めた。幕引きを急いではならない。

 スズキを軽自動車最大手に育て上げ、今も経営の一線に立つ鈴木修会長は、「(テストコースに)防風壁などの設備投資をしなかったことを反省している。風通しのいい組織にしないといけない」と語った。企業統治のあり方にまで踏み込んだ検証が求められる。

 2社の不正が見逃された根本には、国がメーカーからの提出データをそのまま使う仕組みがある。国交省は既に見直しに着手したが、どこに不正の芽が生じやすいのか。今回は「不正なし」と報告したメーカーへの聞き取りも含め、改善策の検討を急がねばならない。