「ゴースト画家」は詐欺か、韓国美術界の慣行か

 画家としても活動している歌手でタレントのチョ・ヨンナム氏(71)に、他人が描いた絵を自分の作品と称して売っていたのでは、という「詐欺」疑惑が浮上している。春川地検束草支庁は16日、ソウル市内にあるチョ・ヨンナム氏の所属事務所オフィスと、チョ・ヨンナム氏の絵を取引していたギャラリー3カ所を家宅捜索した。検察は今年4月、チョ・ヨンナム氏の代わりに絵を8年間にわたり300点以上描いたというA氏(60)の情報提供に基づいて捜査に着手した。

■「90%は私が描いた」VS「私のアイデアだから私の作品」

 A氏の主張は「絵の90%をA氏が描き、チョ・ヨンナム氏はそれに上塗りしてサインを入れ、同氏の作品として発表した」というものだ。絵を代わりに描く費用として、作品1点当たり10万-20万ウォン(約9300円-1万8500円)を受け取ったという。家宅捜索を受けたソウル市鍾路区通義洞のPギャラリー関係者は「チョ・ヨンナム氏の作品の価格は、最も人気がある花札シリーズで1号当たり50万ウォン(約4万6000円)ほどだ。主に売れるサイズは20-30号(1000万-1500万ウォン=約93万-139万円)だが、取引は多くない」と語った。チョ・ヨンナム氏は本紙の電話取材に対し、「最初は私がすべて描いていたが、作業量が増えるにつれ年齢的・体力的に難しくなり、数年前から助手を数人使っていた。あくまでも助手はアシスタント役で、アイデアは私が考えたものだ」と語った。そして、「助手を使うのは古くからの美術界の慣行」とも言った。

■「作品はアーティストの手で作るべき」VS「美術界で助手を使うのは一般的」

 一般の人々と美術界では見解の違いがある。インターネット上では「自分で描いていないのに、どうして自分の作品にできるのか」という批判が主流だ。「常識的に考えて、画家の名前を出している作品は100%画家の手で作られなければならない」という論理だ。法務法人「世宗」のイム・サンヒョク弁護士は「チョ・ヨンナム氏が『助手を雇うのは美術界の慣行だ』と主張しても、購入者がこれを『詐欺』と見なせば、同氏が容疑を掛けられるのは避けがたい」と語った。

 しかし、美術界では「助手を雇うこと自体は問題にならない」という見方をしている。韓国芸術総合学校美術院のヤン・ジョンム教授は「現代美術のカテゴリーで見ると、『すべてが芸術として可能な世界』だ。助手を使ったことそのものを問題視することはできない」と言った。

金美理(キム・ミリ)記者 , 権承俊(クォン・スンジュン)記者
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