地震で原発事故、退避方法検討を 広域連合、国に要求へ
関西広域連合は19日、多数の家屋が損壊する地震で原発の重大事故が発生した場合の避難方法について、国に対策を求める方針を決めた。国は、原発の半径5~30キロ圏内では屋内待避を基本とするが、熊本地震では多くの住宅が倒壊し屋内待避が難しかったことから、原発の周辺住民から不安の声が上がっている。
国の指針や市町村の避難計画では、原発事故時、5キロ圏内は避難、30キロ圏内は屋内待避し、放射能汚染を防ぐ。しかし熊本地震では最大震度7の激しい揺れが2回起こり、強い余震も続発。車中泊など建物外の避難を余儀なくされる住民も多く、複合災害への備えが課題となった。
福井県の原発から30キロ圏内には京都府、滋賀県合わせて約14万6千人が居住する。しかし、堅固な建物が多いとはいえず、30キロ圏内の宮津市役所庁舎は震度6強以上の地震で倒壊する危険が高いと診断されており、公共施設でさえ耐震性に不安があるのが現状だ。高浜原発(福井県)の5キロ圏に一部が含まれる舞鶴市で11日に開かれた避難計画の住民説明会では、「熊本と同じ地震が来れば、屋内避難できない」と疑問や批判の声が上がっていた。
この日、大阪市で開かれた広域連合の首長会合では、2017年度政府予算編成に向けた提案の内容が議論された。
滋賀県の三日月大造知事が原発と地震の複合災害について「屋内にとどまれない場合を想定し、対策を検討すべきだ」と指摘。井戸敏三連合長(兵庫県知事)も「屋内待避できない状況が現実に出てきた。国に検討を求める」と述べ、提案に盛り込むことが了承された。
提案ではほかに、北陸新幹線敦賀-大阪間の整備に関し、国と地方が2対1で建設費を負担する全国新幹線鉄道整備法に基づく現行負担割合の見直しを新たに要求した。文化庁の京都移転を巡り、京都府と京都市の費用負担軽減に努めることも盛り込んだ。6月中に国へ提出する。
【 2016年05月19日 22時10分 】