政治家を立派に見せる仕事

Share Button

昨年の3月、大腿骨を折って入院しました。
相部屋がいっぱいということでいきなり個室に入れられたのだけど、1日4万円近くもかかる。
脚が痛い上に財布も痛いとあってはたまらない。
「相部屋が空き次第、即、移して」
と頼みました。
しかし、入院するなり、その個室で毎日打合せをするように。
入院中なのにスケジュール表が埋まってしまった。
このまま相部屋に移ったとして、そこに広告代理店の人たちが何人も来て始終打合せ、というのはナンボなんでも他の患者さんたちに迷惑だろう。
なにしろ脚の骨折だからサロンに移動することもできないわけで。
で、税理士に電話して、
「この個室料って経費にならんかね」
と聞いてみたら、
「仕事で使ってるなら、ちゃんと理由があるわけなので、なるんじゃないですか」
と。
それで、相部屋はキャンセルして、会社経費で個室を使うことにしました。
以上の話は真実だけど、それを聞いて「そんな言い訳は許せん!脱税だ!」と憤慨する人がどれくらいいるでしょうか。
多くの人が
「スジが通っている」
と感じるんじゃないでしょうか。
希望的観測だけど、おそらく税務署の人も。

都知事の弁明で僕は何となくこのことを思い出していたのだけど、とにかく、なんて弁明がヘタなんだと思いました。
スジが通っていないんです。
僕だったら、
「自分は土日祝日も働きっぱなしです。そういう日はホテルで書類チェックや打ち合わせするようにしてます。そこに時々家族を呼びます。知事就任以来、家族皆でどこかに外出するというと、そういう機会しかないからです。それも公私混同で許されないということであれば、以後は慎みます」
と言うかなあ。
舛添氏は前任、前々任と違ってきちんと毎日登庁されているそうなので、こういうことが言える根拠はあるでしょう。
また、飲食費についての弁明も稚拙すぎる感が。
家族で食べた領収書は別の箱に取っておいたのだがそれが混ざった、ということだそうだが、個人事務所であれ、仕事に関わらないものを経費として落とそうということなら、それ脱税ですからね。
私人に戻ったとたん国税の調査入るんじゃないでしょうか。
僕だったら、
「会食で使用する店は、相手によってレベルを変えないといけません。高級店じゃないと失礼に当たる相手もあれば、回転寿司クラスでもOKの相手もいる。会話の内容にもよる。シークレットな内容なら秘匿が保たれる店じゃないといけないし、オープンな内容ならガヤガヤした店でもいい。だからこういう雑多な領収書が混ざることになるのです」
などと言うかなあ。

最強の営業戦略は「正直」だ、という話がありますが、政治はそれに当てはまらないでしょう。
政治とは有権者に対してブラックボックスにし続けなければいけない部分を多く含みながら、表の顔作りをどうするか、という側面を持つものであるように感じます。
だから政治家の言葉は曖昧で、しどろもどろになりがちで、そこが不信感のタネになる。
米国の政治家にはコミュニケーション・ブレーンとでも言うべきプロが付いていて、答弁の内容を起案したりチェックするらしいけど、日本の政治家はあまりにコミュニケーションがザル過ぎます。
同じ内容を伝えるにしても、話す順序、プライオリティによって聞く方の印象はガラッと変わるし、何よりスジの一貫したストーリーをどう構築するかが重要。
そういうサポートをするプロが付いていればいいのにと思います。
僕自身はそういう仕事をするつもりはないけども、政治家が失言したり、救いようのない弁明をするたびにワイワイ騒ぎになるのも鬱陶しいし、それで再選挙みたいなのも税金のムダ遣いだし。
「政治家を立派に見せる仕事」を誰かやってくれないものでしょうか。