美術 ★★★★★
音楽 ★★★★★
北林さんのマレフィセント 勝てる気がしない
結論:最高の悪役をありがとうございました。
1959年 アメリカ
監督:クライド・ジェロニミ
※吹き替え版キャストは旧日本語版です
/主要人物/
■オーロラ姫(吹:高田敏江)
今作のプリンセス。
生まれてすぐにマレフィセントから「16才の誕生日に糸車の針に指を刺して死ぬ」という呪いをかけられたため、森の隠れ家で「ブライア・ローズ」という名前で身分を隠されたまま、人間に化けた3人の妖精たちに育てられる。(ちなみに「Briar」とは「茨」の意)
■マレフィセント(吹:北林谷栄)
今作のヴィランズ(悪役)。
自分だけがオーロラ姫の誕生祝いに招待されなかったことに怒り、姫に呪いをかけた。城に茨を生やしたりドラゴンに変身したりと、悪の女王にふさわしい貫禄を見せ付ける。
■フローラ(吹:長岡伸子)
赤の妖精。3人のリーダー格。
自身のイメージカラーは譲らない。
「ピンクよ!」
■フォーナ(吹:長倉茂子)
緑の妖精。
ほっそりとしたおっとりさんだが、卵をカラ付きのまま生地に混ぜたりと、料理のセンスは壊滅的。
「私、ハッピーエンドが大好きなのよ」
■メリーウェザー(吹:堀越節子)
青の妖精。ぽっちゃりさん。
ぷりぷり怒る姿がキュート。死の呪いを「眠るだけ」にしたり、マレフィセントのカラスを石に変えたりと何気に活躍する。自身のイメージカラーは譲らない。
「ブルー!」
■フィリップ王子(吹:宮本昭太)
オーロラ姫の許婚。
だが森で出会ったローズに一目ぼれし、王である父親から激怒されるも、「愛する人と結婚します!」とあっさりと国も王位も捨てる。親父涙目である。
「父上は古いなあ。今はもう14世紀ですよ?」
懐かしきディズニー映画の趣ある映像美
ディズニー映画の中で1番好きなプリンセスものといえば、シンデレラでも白雪姫でもなく、実は「眠れる森の美女」だったりします。
あの宝石をちりばめた絵本から始まる物語であり、その時代のディズニーの特徴でもある、メアリー・ブレアの色彩で描かれた背景美術と、美しいバレエ音楽に合わせ流れるように動く手描きのアニメーションは、月並みですが「素晴らしい!」の一言です。
ケンカをしながらもローズのために魔法を使わず手作りでケーキとドレスを作ろうとする妖精たちのテンポのよいやりとりや、王子の衣装をぶんどってローズと踊る動物たちのたまらない可愛さ(とくにフクロウ!)、ステファン王とヒューバート王が酒を酌み交わす間にこっそり自分も拝借しちゃう酔っ払いの執事など、コミカルなシーンも盛り込みつつ、マレフィセントの緑色の光が恐ろしくも妖しくオーロラ姫を誘うシーンなど、怖いシーンもきっちりと描いていました。部下のグーンたちのデザインも結構怖かったですよね。
そして何と言っても最高なのが、旧日本語版キャストの名演です!
旧バージョンでは悪役の中でトップクラスの人気を誇る悪の女王・マレフィセントの声を、「日本のおばあちゃん」である北林谷栄さんが担当されています。お名前だけでは分からない方もいるかもしれませんが、「カンタァ~~~!」という声ならば聞き覚えがある方は多いはず!
さすがの声優好きな幼稚園児も、マレフィセントさまとカンタのばーちゃんの声が同一人物だとは夢にも思っていませんでした・・・。これはもう一度マレフィセントを観なければ!と思って借りてきたDVDを見たら、声が違っていて愕然!
なのでここからは旧ビデオ版と、現在のソフト版での違いについて簡単に述べていきます。
ビデオ版とソフト版の違い
キャストが全員変わっているだけでなく、セリフや主題歌の歌詞も大きく変更されているのが特徴です。余りにも印象が変わっているので、子供の頃に旧版のビデオを観ていた方の中には、新しいバージョンに慣れない!という私のような人もいるのではないでしょうか。
ローズの身分の呼び方
旧版ではオーロラが身分を偽った姿であるローズを「百姓娘」と呼んでいましたが、ソフト版ではその言葉は出てきません。妖精たちの「百姓女に化けて~」というセリフも全て無くなっています。「百姓」が職業差別用語にあたるから、というのが理由のようです。
主題歌「いつか夢で」
マレフィセントの声が違うことも衝撃でしたが、歌の歌詞が全て変わっていたこともショックでした。出だしから違う!!
旧版)「夢の中でいつも逢う君」
新版)「あなたをいつも夢に見て」
この出だしは印象的なので、ものすごく違和感があります。
さらに新版ではサビの歌詞が
「でも分かる あなたこそ
愛してくれる あの夢と同じに」
と「愛してくれる」の部分が若干字あまりみたくなっていますが、
旧版では
「なれど 同じ夢見を
重ねれば 正夢になるという」
歌詞になっています。
旧版の方がぴったりで良かったと思うのですが・・・。言い回しが子供には難しいという判断だったでしょう。でも幼稚園~小学校低学年がわかったんだから大丈夫だと思うよ!?
マレフィセントのセリフ
マレフィセントが牢屋で王子に「物語」を聞かせる場面や、茨の呪いをかける場面、最後にドラゴンに変身する時など、どれも旧版の呪文のような言い回しが訂正されていて、違いがはっきりとわかります。
ただ、新版の「そうはさせるか!」や「茨の森で包むのだ~!」という、いかにもすぎるセリフより、北林さんのあのおどろおどろしい声で迫力満点に詠唱してくれていた方が、個人的にはマレフィセントには合っているような気がしました。
妖精たち
新しいバージョンでは、妖精のフローラはサザエさんのフネ役でお馴染みの麻生美代子さん、フォーナを「声優界のゴッドマザー」である京田尚子さんが、メリーウェザーを悟空野沢雅子さんが演じられています。なのでメリーウェザーの印象は、他の二人と比べ大分変わるかもしれません。
さらに妖精たちのセリフも主題歌と同じく、言い回しが分かりやすいものに変えられていますが・・・
マレフィセント・ドラゴンを倒す為、真実の剣にフローラが魔法を掛けるシーンの台詞が、新バージョンでは
「真実の剣は素早く正確に飛び、悪は死に絶え二度と蔓延ることなし!」
となっていますが、
旧バージョンでは
「真実の剣(つるぎ)よ速く飛べ 悪は滅び善は残る!」
という台詞に。
・・・新バージョンの「素早く正確に」っていう説明部分が、なんか呪文っぽさを消してないか!?それとも、単に呪文っぽい方が好きな、私の厨二病気質がそう感じさせるのか・・・。
ナレーション
旧版では佐々木勝彦さん、新しい方は森本レオさん。
旧バージョンが大分あっさりしているので、これは人によっては温かみのある森本レオさんのナレーションの方が好き、という方もいらっしゃるはず!
旧吹き替え版のビデオを買う際の注意点
Amazonやネットオークションなどで旧吹き替え版のビデオをご購入される際は、字幕版か吹き替え版かよくご確認ください。
Amazonのレビューでも注意されていましたが、1989年発売で、発売元がDHVジャパンになっているものが旧吹き替え版です。また、商品タイトルが日本語吹き替え・VHSになっていても新キャスト版の可能性がございます。商品パッケージがトップにある「オーロラ姫にキスをする王子と、その後ろにそびえ立つマレフィセント」なのが旧吹き替え版、王子とオーロラ姫がダンスを踊っているパッケージが新キャスト版です。
ただし、Amazonではパッケージやタイトルが一緒でもごっちゃになっていることがあるようなので、買う前に出品者に一度確認をとることをおすすめいたします。
Amazonのレビューが大変参考になりますので、もしそちらで買われる際は各レビューをチェックしてみてください。
【最後に】
権利関係とか使用してはいけない言葉とか色々あるのでしょうが・・・TV放送できないのは仕方ないとはいえ、日本を代表する名優である北林さんの芝居がDVDで遺せないというのは、やっぱり残念でなりませんね。
懐古厨なんでさんざん旧版を推してしまいましたが、綺麗な映像で観たい!という方はDVD版をおすすめします!
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・・・我が家のビデオデッキは、あと何年持つかな・・・。
↓ディズニー、お好きですか?