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朝日新聞が記者の給料平均160万円削減の“理由”

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第160回】 2016年5月14日
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 背に腹は代えられないということか。それとも、落ちるところまで落ちたと言うべきなのか。

 朝日新聞の発行部数はこの3年で100万部減の660万部と朝日の社員は言うが、実際はさらに200万部少ない470万部との声もある。今年3月末、朝日新聞社は“押し紙”問題で公正取引委員会から、口頭で“注意”を受けたのである。

 「押し紙とは、新聞社が部数の水増しのため、実際に配達されている部数を超えて販売店に注文させ、買い取らせる新聞のことです。例えば、実際の購読者が700世帯の販売店に1000部を注文させれば、300部が押し紙となる。これは独占禁止法で禁じられていて、これまで朝日に限らず、数多くの新聞の販売店主が公取に資料を持ち込んできましたが、処分はほとんどありませんでした。今回、公取が注意に動いたのは画期的なことで、いよいよ“本気”になったのか、と思います」(新聞販売問題に詳しいジャーナリスト・黒薮哲哉氏)

 販売店に新聞を押しつけるから“押し紙”なのだが、朝日が200万部もの押し紙をやっているのであれば、たいへんな資源の無駄遣いだ。ぜんぜんエコじゃない。

 〈販売店主たちがすべての水増し分のカットを要求し、朝日がそれにすべて応じたとしよう。すると、部数は3割減少する朝日の収入のうち、部数に連動する「販売+広告収入」の割合は9割(2016年採用HPより)。その3割が消えると収入の約27%が一気に吹っ飛ぶことになる。背筋が寒くなる数字である〉

 朝日新聞社はいま、そういう危機に直面しているのである。だが、朝日新聞の売り上げ部数が激減したのは、押し紙だけが理由だろうか――?

 朝日新聞は、昨年4月1日から“お詫びと訂正”を社会面に載せるようになった。ちょっと興味深かったので、紙面にお詫びと訂正が載るたびにスクラップをしていたのだが、昨年4月1日から今年3月31日までの1年間に、朝日新聞ははたして何回のお詫びと訂正記事を載せただろうか。

  4月(3回) 5月(4回) 6月(10回) 7月(4回)
  8月(10回) 9月(7回) 10月(10回) 11月(6回)
  12月(6回) 1月(10回) 2月(10回) 3月(10回)

 という結果になった。驚くべきことに、全てを足すと90回にもなるのだ。ただし、一度の掲載で複数の“お詫びと訂正”を載せた日が13回あったため、朝日新聞が一年間で記事を訂正した数は、103回だ。ほぼ3日に一回である。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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