安倍政権が看板政策に掲げる「1億総活躍プラン」をまとめた。社会保障分野を中心に暮らしの基盤を厚くし、国民の安心感につなげる。それが消費を底上げし、経済成長をもたらす。そんな「成長と分配の好循環」をうたう。

 内容は多岐にわたるが、柱は労働分野と育児・介護分野だ。同一労働同一賃金や、最低賃金として時給1千円をめざし、非正社員の待遇を改善する。長時間労働を是正する。人手不足が深刻な保育や介護の現場で働く人の賃金を引き上げる。そんな目標が並ぶ。

 どれも長年の懸案であり、対応を急ぐべきだ。しかし、いずれも実現は容易でなく、具体化への道筋はなお見えない。

 参院選が近い。風呂敷を広げたはよいが、尻すぼみになっていくようなら、選挙目当てとの批判は免れまい。問われるのは首相の本気度と実行力だ。

 同一労働同一賃金では関連法の改正に踏み込むとしたが、まずは何が不合理な待遇差かを明確にできるか。「同一」の中身も、総じて賃金水準が低い非正社員の方に合わせるのではなく、全体の底上げにつなげねばならない。

 子育てや介護と仕事の両立を阻む要因ともされる長時間労働は、関連する規定を見直すかどうかの検討を厚生労働省の審議会に委ねるという。まずは政府として、労働時間の上限規制に踏み込むなど改革の方向性を示すべきではないか。

 保育所や介護施設を増やしても、働く人がいなければ役に立たない。保育士や介護職員の賃金を来年度から引き上げるとしたのは前進だが、2千億円ともされる財源の検討は年末の予算編成時に先送りした。教育分野では、関心が高い「給付型奨学金」の創設が、やはり財源問題から検討項目にとどまった。

 「アベノミクス」による税収増を活用するとの声もあるが、安定的な財源と言えるだろうか。他の分野の予算を無理に削って財源をひねり出すのも本末転倒である。

 そもそも子育て支援は、「税と社会保障の一体改革」で充実を約束している。しかし消費税率を10%にしても財源がなお3千億円足りない状態だ。いまだにめどが立たず、保育士の配置を厚くするなどの施策が置き去りにされている。

 まずは消費税率を予定通り10%に上げる。それでも財源が不足する現状を直視し、国民が納得できる確保策を示した上で、一つずつ着実に実行していく。それが責任ある態度である。