ドローンが活用されるシーンとして一般的なのは、輸送、農業、空撮あたりだろうか。いずれもドローンは何かを運ぶ、育てる、撮るための「手段」として用いられる。しかし今回は、ドローンそのものが「主役」となる用途をご紹介したい。
アメリカのメディア会社、Atlantic Mediaが運営するグローバルニュースサイト「Quartz」が先日、ドローンによる「パフォーミングアーツ(舞台芸術)」をまとめた動画をFacebook上で公開し、2200件以上もシェアされ話題となった。
その動画のなかで紹介され、世界で知られる作品となったのが、以下の4作だ。
- Weightless|マルコニ・ユニオン
「世界一癒される音楽」として話題となった、マルコニ・ユニオン作曲の「Weightless」のミュージックビデオ。機体に真っ白く光る照明を搭載した20体以上のドローンが、イギリスの音楽療法学会と合同で制作されたなめらかな曲に合わせて浮遊する。曲名が表す「無重力」感がよく伝わる動きだ。動画が公開されたのは2011年。5年前にこの企画がなされ、そして実現されたことにも驚きを覚える。
- SPARKED|シルク・ド・ソレイユ
世界的に有名なエンターテイメント集団、シルク・ド・ソレイユと、スイス拠点の自動制御されたデバイスによるライブパフォーマンスの演出を専門とする、Verity Studiosが共同で制作した、ドローンと人による協働パフォーマンス。さまざまなカラーや柄のランプシェードを被った10体のドローンが、人の動きと完璧にシンクロして舞う姿は圧巻だ。役者とドローンが阿吽の呼吸でやりとりするシーンに、今後の進化への期待が膨らむ。
- Drone 100|インテル
半導体メーカーのインテルが、100台のドローンを同時に飛ばすギネス記録に挑戦し、達成したプロジェクト。同社が、オーストリアで毎年開催されるメディアアートの祭典「アルス・エレクトロニカ」のラボとコラボレーションしたもの。オーケストラの演奏に合わせて、夜空でたくさんのドローンがライトを点灯させながら編隊飛行し、インテルのロゴなどさまざまな形を作り出していく。
- Sky Magic|マイクロアド
QUARTZの動画では、『Catalyst』を運営するマイクロアドが提供する、ドローンによる次世代サービス「Sky Magic」のパフォーマンスも、多くの時間を割いて紹介された。富士山をバックにLEDライトを搭載した25台のドローンが、三味線のライブミュージックに合わせて飛行する、日本の伝統と新しいテクノロジーを掛け合わせたものである。同プロジェクトには、ドローンをRGBの粒のようにして何もない空間上に「飛ぶディスプレー」を今後作り出すというビジョンがある。
パフォーミングアーツには最先端技術が詰まっている
マルコニ・ユニオンとシルク・ド・ソレイユはさておき、なぜインテルやマイクロアドのような元来非エンターテイメントの分野にいたテクノロジー企業が、ドローンを活用したパフォーミングアーツのプロジェクトを展開しているのかーー。
その狙いは、単なるブランディングではない。パフォーミングアーツは総合芸術で、だからこそ最先端の技術を結集させる必要があり、そこで磨かれる技術力が市場における競争優位性やその先にある各々のビジョン達成のための動きを後押しするからだ。
特にパフォーミングアーツによって磨かれる、ドローンとの関わりが深い最先端の技術は「RTK」と「DMX 512」だ。
RTKとは、GPSの100倍の制御力と言われるリアル・タイム・キネマティックのこと。ドローンの制御にはこれまでGPSが採用されていたが、GPSでは10メートル前後の誤差が生じる場合がある。その誤差を数センチメートル単位に縮小できるのが、このRTKだ。
RTKはもともと測量の領域で発展した技術だが、今後ドローンと組み合わせることで各方面への応用も進む見込み。この技術を磨くことで、複数のドローンを使った編隊飛行の精度を高めることが可能となる。パフォーミングアーツはそのための実験の場として適うのである。
もう一つの技術が、DMX512。照明の動きや光をコントロールする技術である。一組の信号ケーブルで1チャンネルしかコントロールできなかったアナログ方式に比べ、デジタル信号を採用したDMX512は一組の信号ケーブルで512チャンネルをコントロールすることができる。
これまでドローンは1台を独立させて飛ばすことしかできなかったが、ドローン制御技術の発展で複数のドローンを意のままに飛ばすことができるようになった。ドローンの動き、そしてドローンに搭載した照明をコントロールすることで、これまで何もなかった空間に情報を投影することができるのだ。この技術自体はそれほど新しいものではないが、ドローンと融合することで「空間の情報化」という新たな可能性を生み出している。