20日判決 管理責任か、観客責任か
札幌高裁 札幌ドームで失明女性 日本ハムなどに賠償提訴
札幌ドーム(札幌市)でプロ野球の観戦中、ファウルボールが当たって右目を失明した女性が、北海道日本ハムファイターズなどに計約4660万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が20日、札幌高裁(佐藤道明裁判長)で言い渡される。危険な打球を防ぐ責任は誰にあるのか。1審判決は「安全管理に欠陥があった」との原告側主張を全面的に認めており、控訴審の判断は今後のプロ野球観戦の在り方に影響を与えそうだ。【安達恒太郎】
訴訟では、球場の安全管理に問題はなかったか▽危険な打球を防ぐ責任は観客にもあるのか−−などが主な争点となった。高裁は昨年10月に和解勧告したが、今年2月に協議が決裂。原告側は責任の所在を明らかにすることや安全対策の改善を求めたが、球団側と折り合わなかった。
原告は、球団側が臨場感確保のため内野席フェンス上の防球ネットを2006年に取り外し、ファウルボール直撃事故が年間約100件発生していたとして、安全管理に欠陥があったと主張。球団側は「観客が臨場感を求めている」と、ネットの取り外しは十分な理由があるとした上で、「場内アナウンスや大型ビジョンで注意喚起していた。女性は打球を見ておらず、危険回避行動を取らなかった」と反論していた。
原告の女性は30代で、10年8月に夫や子供と一塁側内野席で観戦中、ライナー性のファウルボールが直撃して顔面を骨折し、右目の視力を失った。昨年3月の札幌地裁判決は、安全性が不十分として球団側に約4200万円の支払いを命じ、「安全対策と臨場感の確保を同列に論じるのは適切ではない。初めての観戦客や幼児、高齢者も楽しめる対策を取るべきだ」と厳しく指摘、球団側が控訴していた。原告側代理人によると、同様の訴訟で球団側に賠償を命じた判決は初めてだった。