同日選を視野 消費増税の再延期検討
16年1〜3月期GDP速報値 個人消費の回復鈍く
安倍晋三首相は18日発表の2016年1〜3月期の国内総生産(GDP)の速報値で個人消費の回復が鈍かったとして、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げを再延期する検討に入った。予定通り増税した場合、デフレからの脱却が困難になると判断している。これに伴い、衆院を解散し、夏の参院選と同時に衆院選も行う衆参同日選を視野に入れる。政権の経済政策「アベノミクス」継続への支持を訴える考えだ。
首相は26〜27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での議論を踏まえ、消費増税先送りと衆院解散に踏み切るかを最終判断する方針だ。今国会の会期末は6月1日。公職選挙法の規定から同日選に踏み切る場合、6月1日に衆院を解散し、7月10日に衆参両選挙を実施する日程となる可能性が高い。
1〜3月期のGDP速報値は2期ぶりのプラスで年率換算で1・7%増だったが、個人消費の伸びは、うるう年で1日多かった影響を除けば小幅だったとの見方が強い。首相は18日の党首討論で「(14年4月に)消費税を引き上げて以来、(個人)消費が弱いのは事実だ。その弱さは我々の予想より弱く、そこに注目している」と強調した。
消費増税の判断については、「リーマン・ショックあるいは大震災級の影響のある出来事がない限り引き上げを行う」と従来の答弁を繰り返したものの、そうした状況に該当するかは「専門家に議論してもらい適時適切に判断したい」と明言を避けた。
また、党首討論では民進党の岡田克也代表が「もう一度、消費税の引き上げを先送りせざるを得ない状況だ」と明言。増税先送り自体は争点にはならない見通しとなり、首相の再延期判断を後押しする形となった。予定通りの消費増税実施を求めてきた公明党内でも「首相が決めれば従う」(幹部)と増税先送りの容認論が出ている。
一方で、首相は15年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを14年11月に延期した際、「再び延期することはない」と明言していた。首相が同日選を視野に入れるのは、前回の延期を決めた後、その判断について「国民の信を問う必要がある」として解散に踏み切った経緯があるためだ。
同日選については、熊本地震の発生後、実施は困難との見方が強まっていた。しかし、熊本地震の復旧・復興のための16年度補正予算が成立し、復興の道筋が付いたとして「同日選の障害にはならない」(首相周辺)との判断に傾いている。地震対応などへの評価から内閣支持率が堅調なことも影響している。
首相は伊勢志摩サミットで財政出動を行う必要を強調する考えで、サミット終了後に大規模な経済対策の検討を指示するとみられている。一連の経済政策について、国民の理解を得るためにも参院選だけではなく、同日選に踏み切るべきだとの意見も首相周辺から出ている。【古本陽荘】