文/末近浩太(立命館大学教授)
「不自由」な中東諸国
冷戦の終結から四半世紀、湾岸危機・戦争(1990-91年)、9.11事件とその後の「対テロ戦争」(2001年〜)、イラク戦争(2003年)、そして、「アラブの春」と「イスラーム国(IS)」の台頭(2011年〜)と、中東は世界で最も不安定な地域の1つであり続けてきた。
中東の安定化のためには何が必要なのか。その鍵として繰り返し語られてきたのが、「民主化」である。
たとえば、よく知られているのが、米国ジョージ・W・ブッシュ政権下の2002年12月に打ち出された、中東の市場経済化と民主化のための「米国・中東パートナーシップ・イニシャティヴ」である。
日本政府も、国際社会と歩調を合わせるかたちで、「公正な政治・行政運営」、「人づくり」、「雇用促進・産業育成」を三本柱とする中東の「民主化支援」を推し進めている(参考:外務省サイト内「『アラブの春』と中東・北アフリカ情勢」)。
しかし、実際には、中東の民主化は遅々として進んでいない。冷戦後の世界において、民主主義はグローバルスタンダードとなった。にもかかわらず、中東諸国には、相変わらず独裁体制が跋扈(ばっこ)している。
米国を拠点とするNGO「フリーダム・ハウス」が作成している、民主主義に関する「通知表」を見てみよう。そこでは、世界各国が「自由」「部分的自由」「不自由」の三段階で色分けされている。その最新版(2015年)によると、中東諸国の22カ国中、「自由」はわずか2カ国、「部分的自由」が4カ国、残りの16カ国は「不自由」である。
中東が世界でも有数の非民主的な地域であることは、地域別の民主化の指標を見ても明らかであり、サハラ以南アフリカを抑えてダントツで最下位となっている(エコノミスト・インテリジェンス・ユニット=EIUの2015年度版報告書)。
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