2016-05-18
■クリミアタタールへの抑圧と、その報道のされ方についてなど
先日のエントリの続き。
池内恵氏のトルコの欧州への複雑な感情と西欧の抜き難い優越意識についての文章(参照)を読んで、自分の書いたものと非常によく似ていたのでまた何か書こうかと思ったのですが、ユーロビジョンのクリミアタタールなどがあって、ツイートしてる内にまた違う方に行ってしまいました。
池内氏の文章から一部引用
「護衛はさせられるけどテントに入れてもらえない」屈辱がトルコを非西欧陣営に押し出しているということは、これは本当に西欧側には通じていない。下請けさせて当たり前、だと思っている。保守派もリベラル派も。リベラル派は、トルコの社会がリベラルではない、と批判することで、実際にはトルコに都合よく下請け仕事をさせる後ろめたさ、矛盾を、他者にも、そして自らに対しても隠している。
こうした感覚は当然西側メディアからは欠落している為、自身も「欧米」から差別されてきた(事に意識的な)日本人にとっては、報道を追うにも結構辛い所があります。この後の言及も途中まで似た事を書かれていて「おお」と思ったのですが、これについてはまた次回。
で、結局全然違う話になるのですが。
今回の主題のクリミアタタールへの抑圧について説明すると結構な作業になるので、今回も詳しい背景説明は省きます。
直近だけ説明しますと、4月末にはロシア司法省が彼ら独自の議会「メジリス」を過激派組織認定し活動を禁止、翌日にはクリミアの複数のジャーナリストや活動家に強制捜索。5月頭にはシンフェロポリのモスクを強制捜索、一時100人以上を拘束しています。これだけ並べても結構なインパクトですね。
ちなみにロシアのこの「過激派認定」が非常に曲者なんですが、メジリスに関して指定を主導しているのは、あの「美しすぎるクリミア検事総長」ポクロンスカヤさんです。立場が立場なんで、この人は他にも証拠もへったくれもないマイダンへの復讐的位置付けの裁判の動きも「主導」していますが(その一方、同時進行で「イルカと戯れる検事総長」映像が公開されたりします)。
ちなみにタタールも黙って弾圧されているような人達ではないので、民族的に同じトゥルク系の(そして例のロシア機撃墜後に、唐突に露のクリミアタタール抑圧に対し熱心になった)トルコとウクライナの間の特使として活躍したり、ウクライナ-クリミアの境界を封鎖してクリミアとの貿易(や電力)を止めたりしてました。これについてはウクライナや西側からもかなり批判が出ていましたが。
たぶん彼らへの抑圧を継続的にフォローしているサイトは、日本語圏にはありません。
おお、これは。クリミアタタール Jamala ユーロビジョン優勝/露国営ロシア1(Rossiya 1)テレビのコメンテーターは、優勝をたたえたが,クリミアのタタール人問題については言及せず,ジャマラの歌を"家族について"の歌だと URL
5.14 ユーロビジョン Jamala/ 個人的には、露がクリミアタタールの放送局を全部潰した事を考えれば、そりゃ逆襲喰らうわなあと。/『BBCが「ロシア優勝」の流れを大いに作ってるわけ』 / “失われた笑いどころを求めて(今年…” URL
おお、NHKでクリミアタタールのニュースを見るとは。 ただ併合後の状況、クリミアタタールの失踪者や死者などについては言及なし。
あまりにもお約束な反応。
まあ私はユーロビジョンについては何も知らないんだけど、昨年の「ロシアの屈辱」についてはわからない訳ではない。 そもそもウクライナに侵攻したから、ハブられるんだけどさ。
うーん、こないだの池内さんの記事についての続きも合わせて、ちょっと書きたかったんだけど、何から書けばいいんだろ。
ただ、なんていうか、ウクライナでもクリミアタタールでも、おそらくゴールが見えて抵抗している訳ではない。 ウクライナのポピュリズムは、多分そのあたりと両輪なのだろうと思う。
正直なところ、クリミアタタールにとっての解決策は現実誰も持ち合わせていない。
今回の優勝で、間違いなくロシアのクリミアタタールへの抑圧は強まる。
でもそれについての報道は、世界におそらくごく小さくしか知られない。 日本では、ナディア・サフチェンコについてすらろくに知られていないけれども、ただ、彼女についての報道や「連帯」が過熱したとしても、西側はウクライナを「テント」の中には入れない。
クリミアタタールへの迫害については、アムネスティや国連人権高等弁務官による報告でも難ありだったりするのが現状 URL クリミアの現状がそれを難しくしてるんですが。
ロシア人の意識だと、やっぱりクリミアとの境界を封鎖して電力を止めた事がまず来るんだろうな。 右セクターやアゾフのような極右と。
うーん。何を軸にして書くかがまとまらない。
サフチェンコやソチ五輪、それからユーロマイダンについての西側のキャンペーンの臭みは、私は好きではない。 ウクライナについて、今回フォローし始めたのは親露派の動きが活発になり出してから。 マイダンはほぼ全くフォローしてません。 興味がないから。
ただウクライナの改革がここの所一気に崩壊して行っているように、いかにもマイダン的な「活動家」には社会を変える事はできない。 それをまるで実現可能かのように煽りまくる米国や西側メディアは、信じ難い程無責任だと私は思っていた。
「アラブの春」と同じ。
ウクライナについての状況はどうしても西側メディアを通してみる事になる訳だし(ロシア語ができればまた変わってくる訳ですが)、ただロシアメディアが補完情報として機能するかというと、あれはもう別物になってしまっている。
話を少し戻しますが、クリミアタタールへの抑圧について継続して報道している数少ない報道機関は “Radio Free Europe / Radio Liberty” つまり、米議会資本の報道機関です。
更に言えば、通常の報道機関っていうのは、派手な動きがない限り報道しなくなってしまう。 こうした意志的な資本関係があるところでないと、継続的に情勢を見ていくのには現実使い物にならない。
先日クリミア人ジャーナリストへの一斉強制捜査が行われましたが、その対象には RFE/RL のクリミア局の記者もいた。
こうやって、クリミアの外への、そしてもちろん内側での情報の流れを止めるわけですよね、クレムリンは。 ジャーナリストを「西側の手先」と非難しながら。
私にはクレムリンや普通のロシア人から、露国内のリベラルが西側に寄りすぎている、もっと言えばおもねていると見えるのもわからないわけではない。 日本や、「西側」以外の国でも、同じような部分はあるから。
ただなんていうのか、トランプにせよ、欧州の極右極左、ポピュリズムにせよ、そうした「蓋をしていた」部分に逆襲されている部分は見える。 今思いっきり地雷踏んでる自覚あるけど。
なぜ「おもねて見えるのか」というのは、その『外』の人々には説明は難しい。
池内さんのトルコについての文章(と元記事)を読んでいて思ったのは、ロシアではなくウクライナとの類似性だった。 わかりやすくEUからの扱いが同じなので。
うーん。この後はまた今度にしよう。 最後の方収集つかなくなっちゃったし。
収拾か。 まあいいや。
資本関係の話ですが、私が主に見ているサイトの中には元ユコスのホドルコフスキーの息子さんが資金を出している所もあります(サイト自身が時々言及している)。当然ロシア側から非常に嫌われており、時々攻撃されてサイトが落ちたりしてました。そんな事も念頭にありながら書いているツイートです。
※ツイートで英語読みのナディア・サフチェンコと表記してますが、実際には「ナデジダ」の読みです。
<追記>
NHKのユーロビジョン優勝記事はこちら
クリミアの少数民族の歌手 欧州最大の歌謡祭で優勝 | NHKニュース
<おまけ>
5.10 ヘーゲル元国防長官、大西洋評議会メディアブリーフィング(評議会メンバー2人も)。NATO東側面へのプレゼンス強化をする際、露との"冷戦形成"に巻込まれないようNATOは慎重を期すべきと。次の大統領がまずやるべきは( URL
プーチンと話をする事〜/NATOは米国の代理じゃないとか、まあそうなんだけど、何かそれ今のタイミングで言いだすのというか。 次期大統領(ヒラリー or トランプ)に向けてという政権交代前シンクタンク売り込み的な、判り易いとこも多々あれ、非常に微妙な気分にさせられた記事…
大西洋評議会のウクライナについての今までの論調は結果的にそれなりにフォローして来ているので、おお、そうですかというか。何というか。
@EleniNumber5 今のタイミングっていうのは変か。
あ、NATO東側面の配備というのは要するに対ロシアです。