【ロンドン=黄田和宏、台北=伊原健作】フィンランドの通信機器大手、ノキアは18日、携帯電話端末市場に復帰すると発表した。自らは端末を製造・販売せず、ノキア出身者らが設立した新会社にブランドや技術のライセンスを供与。台湾の鴻海精密工業グループがスマートフォン(スマホ)などを受託製造する。2014年4月に米マイクロソフトに携帯端末事業を売却してから2年を経て、市場に再参入する。
ノキアは同社の出身者らがフィンランドに設立したHMDグローバルに今後10年間、端末の開発に関するライセンスを供与する。HMDは従来型携帯やスマホ、タブレット端末を投入する計画で、ノキアブランドの端末の販路拡大に今後3年間で5億ドル(約550億円)以上を投じる方針だ。
HMDは同日、マイクロソフトが持つ従来型携帯でノキアのブランドを利用する権利や関連するデザインの権利を条件付きで取得することで合意した。16年後半に取引を完了する見通しだ。スマホやタブレットには、米グーグルの携帯向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を用いる予定だ。
ノキアはかつて、従来型携帯で世界首位の圧倒的なシェアを占めていたが、スマホの普及などを背景に業績が悪化。マイクロソフトへの端末事業の売却以降は、通信インフラ事業などに事業を集約してきた。一方、保有する知的財産権やブランド力を有効活用するため、最近は仮想現実感(VR)カメラなどの端末事業を拡大し、携帯市場への復帰時期を探ってきた。
端末の製造では、鴻海のグループ会社の富智康集団(FIHモバイル)の協力を得る。FIHは18日、マイクロソフトが保有する元ノキアの従来型携帯の製造・販売事業を3億5000万ドルで買収することで合意した。ノキアはHMDやFIHと、ノキアブランドの端末の販売拡大に向けて協力関係を築くことで合意しており、新興国などでのシェア獲得を目指している。
もっとも、スマホ市場では、米アップルや韓国のサムスン電子の販売が頭打ちとなるなど、普及の一巡により競争が激化している。こうしたタイミングでノキアが市場に再び参入することで、携帯端末を巡る価格競争が一段と厳しくなる可能性がある。