もう数年前になるが、ニュースで大きく取り上げられたような大惨事の事故で友人が亡くなった。
事故当日、仕事中に友人から電話があり、「アイツが事故で死んだ」と知らせを受けた。
意味がわからなかった。ついこないだの正月に、一緒に飲んだばっかりのアイツが?
意味がわからなかったが、とりあえず上司に友人が亡くなったので地元に帰らしてほしいと頼み込んだが、
うちの会社は会社というかただの軍隊で、正月の三日以外は休み無し。日曜ですらやることが無くても午前中だけ出社せねばならず(もちろん無給!)社長の口癖は「今の若いヤツは仕事もしねえですぐ休みたいって言いやがる」だ。お前はワタミか!
急な休みは家族が死んだときのみという謎の暗黙の掟があって、案の定「死んだの家族じゃないんでしょ?じゃあダメだよ」の一言で葬儀には参加することは叶わなかった。まあ、ノロウイルスやインフルエンザに感染した社員ですら出社させるから、当然か。社長曰く、「風邪なんて酒飲めば治る」。
仕方ないので、テレビのニュースを確認すると、地方の田舎で起きた事故なのにも関わらず大々的に報道されていた。
事故現場を映した映像には、そいつが運転していた車の原型は無く、ただの鉄の塊が映っていた。
ネットを見ると、あまりに凄惨な事故だったせいかその話題一色となっていた。
2ちゃんねるではスレがパート化するほど盛り上がっていて、「どうせ死んだのはDQNだろ」「DQNが死んで日本の負担が減りました!万歳!」といった書き込みで埋っていた。
しかし、それを見ても怒る気にはは全くならなかった。なぜなら、死んだアイツ自身、もし同じニュースを見たらここに書き込んである内容と同じようなことを2ちゃんねるなりアフィブログのコメント欄に書き込むようなヤツだからだ。
2ちゃんねるではDQN、DQNと大合唱されていたが決してDQNではない。2ちゃんねるにDQNと書き込んでいる層と全く一緒で、女性蔑視・処女崇拝をし、二次元でしか抜けないと豪語し、アニメキャラを嫁と呼び、初音ミクとエロゲをこよなく愛する。「クラナドで泣けない奴は人間じゃない」とよく主張していた。そして、政治なんてロクに理解もしてない癖に自民党マンセー、チョン連呼の典型的ネトウヨだった。でもプライベートでは至って普通だ。
でも、死んだ奴はDQNじゃなくて寧ろお前らの仲間だってことは知って欲しかったな。
フェイスブックを見ると、普段は自分がいかにリッチでお洒落な生活をしているかのアピールに必死な、端から見れば滑稽極まりない同級生たちが事故を受けて気色悪いポエムを掲載しまくっていた。「大切な友人を亡くした」とか言ってるけど、俺たちは学生時代モテないグループで、モテるグループに散々「キモい、童貞」だとバカにされていて、そのバカにした張本人たちのポエムで溢れていた。てめえ、絶対「大切な友人」なんて微塵も思っちゃないだろ。「知ってるヤツがテレビのニュースになる事故で死んだから何か書こう」程度の浅はかなコメントだろ。第一、卒業してからこちとらお前とは何の関わりもねーんだよ。てめえに「大切な友人」とか言われる筋合いは無い。
そんな「亡くなって悲しい」ポエム投稿した直後に「今日は○○のライブ見てきました!超楽しかった!」とか書いてて他人事感丸だしのヤツはいるし、そのポエムのコメント欄には全くの赤の他人なのに「死んだのは知り合いかもしれない!悲しい!」と投稿した直後、「やっぱり知り合いじゃ無かった!良かった!」というのを見つける始末。こいつらは一体どういう精神状態なんだ。
そういえば死んだアイツはネットで日記を書いてたことを思いだして見てみると、最後の日記は「バカのせいで交通事故が起こるところだった」的なニュースにコメントした日記で、「このバカ車に轢かれて死ねばよかったのにな」と記されていた。
それを書いた数時間後に自分が交通事故で死ぬことになるとは、流石に言霊という言葉を意識せずにはいられなかった。
俺は誠に申し訳ないことに葬儀には参加できなかったので、未だにアイツが死んだとは思っていない。後に彼の実家に挨拶に行った際、遺影を見ても元気な写真で、今もどっかに居るんじゃねーかとすら思ってしまう。
けど、みんなで集まって飲もうって時に、必ず誘われてたのに誰からもアイツの名前が出ないときに、ハッと気づいて悲しくなる。
これをここに書いたのは、先日雑誌を読んでたらこの事故をもとにしたプレゼンで自動車学校の教官がなんかの大会で授賞したという記事を見つけて、もちろん素晴らしいプレゼンだったのだろうが、なんか少しイラッとしてアイツのことを嫌な感じで思い出したからだ。
アイツは少しイジるとすぐキレるようなとこがあったけど、これ読んで怒んないでね。