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【私説・論説室から】

ある母さん官僚の奮戦

 厚生労働省のキャリア官僚、河村のり子さん(40)は三歳と六歳の女の子のお母さんだ。

 二十代の頃、月の残業時間は三百時間を超えた。「体がつらくてたまらなかった」。法改正を担当し徹夜が続いていた時、直属の上司が突然死した。三十六歳の若さだった。同期の女性は他に三人いたが、家庭との両立に悩み、みな「泣きながら」辞めていった。河村さんも、一度は上司に退職を告げた。

 残業の大きな要因が閣僚らの国会答弁(案)の作成だ。国会質疑では議員が事前に質問要旨を通告し、担当部局が答弁を作る。通告が前夜になると、明け方まで作業する。

 河村さんは雇用均等政策課の課長補佐だった昨年、質問通告が突然あった場合に備え、職員が交代で一人ずつ残る「当番制」を導入した。自分が当番の時以外は、当番が作成した答弁をメールで確認する。それまでは、多くの職員が居残りを強いられていた。その前年には、他省庁の女性官僚とともに、早めの質問通告を求めるなど霞が関の働き方改革提言をまとめ、自民党幹部などに申し入れた。

 「これから三割を占める女性職員が子育て期に入る。男性を含めた全体の働き方を変えないと早晩、官僚組織はもたなくなる」

 政府、与野党はこぞって長時間労働の是正を訴える。ならば“隗(かい)より始めよ”。まず足元からと言いたいが、これはもちろん全国の職場が抱える問題でもある。 (上坂修子)

 

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