藤本健二(元金正日専属料理人)
個人が組織に勝つ時代になってきた。アメリカではトランプが国を変え、日本では藤本健二が日朝の扉を開ける。「金正恩の唯一の友人」が安倍総理の親書を携え、拉致問題を解決する日は来るのか。
金正恩自ら迎えに来た
忘れもしない、4月1日のエイプリルフールの夜10時26分のことです。箱根のホテルで調理師のアルバイトをしていた私のところに、北京のM氏(在日朝鮮人)から電話が入り、「太陽節(4月15日の金日成〔キムイルソン〕誕生日)に平壌に招待したいから11日までに北京に来てほしい」と言われました。
前回'12年7月に訪朝した時も、M氏からのメッセージで金正恩〔キムジョンウン〕最高司令官(第一書記)の招待を受けたので、私は急いでパスポートを取得して、北京へ飛びました。そして4月12日午後2時過ぎ、平壌順安空港に降り立ったのです。
約4年ぶりの訪朝でしたが、空港はすっかり新しくなっていて、迎えのベンツに乗って空港近くの招待所へ行きました。そこで半時間ほど待つと電話が入り、「高麗ホテルの表玄関に行くように」と指示を受けました。
高麗ホテルは、'80年代に在日朝鮮人が建てた平壌の最高級ホテルで、私も'84年から'89年まで、このホテルの地下の日本料理店で寿司を握っていました。
高麗ホテルの玄関口まで行き、そこで待機していると、一台の大型ベンツが、10mくらい向こうに停まりました。助手席に座っているのは、長年私の秘書役を務めていた、懐かしい金チャンソン党中央秘書室副部長でした。
私は、運転席を見て仰天しました。何と、金正恩最高司令官が、自ら運転して、私の様子を見に来てくれたのです。
藤本健二氏は、1947年秋田県生まれの寿司職人。'82年に北朝鮮にわたり、故金正日総書記の寵愛を受け、'01年に帰国するまで「金正日の料理人」を務めた。金正恩第一書記とは、7歳から18歳まで(スイス留学時を除く)を共に過ごした。世界で初めて金正恩の存在を明かし、後継者を予見したことでも知られる。今年4月12日から23日まで訪朝し、前回'12年に引き続き、金正恩第一書記と会食した。
ベンツから金チャンソン副部長だけ降りて来て、私に命じました。
「ホテルの部屋へ上がって、シャワーを浴びて身体をきれいにし、ポケットに何も入れずに来い」
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