核軍縮部会 日本は汗かく姿見せよ
オバマ米大統領の被爆地・広島への訪問を控え、先週までスイス・ジュネーブで核軍縮に関する重要な会議があった。「核兵器のない世界」を実現するための法的な措置を話し合う国連の公開作業部会だ。
今回は2月に続く第2回会合とあって実質的な議論に入り、法的措置の内容について、各国の意見対立がいっそう浮き彫りになった。
作業部会は、核兵器を法的に禁止しようという国際的な潮流の高まりを受けて、昨年の国連総会決議によって設立された。米露英仏中の5核保有国はこうした動きに反発し、部会そのものに参加していない。
会合では、メキシコ、ブラジルなど9カ国が、核兵器禁止条約を念頭に、核兵器を禁止するための法的な措置についての交渉を2017年から開始するよう、踏み込んだ提案をした。核兵器の非人道性を訴え、禁止を求める動きは広がりを見せ、より具体的なものになっている。
一方、米国の「核の傘」に依存する日本や豪州、北大西洋条約機構(NATO)諸国は、国家の安全保障を重視し、段階的な核軍縮を意味する「漸進的アプローチ」を訴えた。
日本は、将来的な核兵器禁止条約の制定まで否定しているわけではない。日本などの主張は「ブロック積み上げ方式」と呼ばれ、段階的に核軍縮を進め、世界の核兵器数を最小限に減らした上で、最後に積み上げるブロックとして、禁止条約を検討することはあり得るという。
それまでに核実験全面禁止条約(CTBT)の早期発効など、やるべきことが多くあると言っている。
しかし、期限を示さずに核軍縮を進めようという姿勢は「核保有国の代弁者」と見なされがちだ。
8月には第3回会合が開かれ、9月の国連総会に提出する勧告をまとめる予定だ。禁止条約を急ぐ国々が多数を占めることから、日本は全会一致による取りまとめを求めているが、多数決で決められる可能性もある。そうなれば、日本の立場はますます苦しいものになるだろう。
今回の会合に参加した広島市の松井一実市長は「核兵器に依存しない安全保障を目指すことが急務」と訴え、各国に禁止条約の締結に向けた議論をするよう求めた。
日本は、核軍縮の進展には核保有国を巻き込まなければならないとして、禁止条約の交渉を急ぐ非核保有国をけん制する。ならば、日本は率先して核大国の米露両国を動かすべきだろう。
オバマ大統領の広島訪問を意味あるものにするためにも、日本は核保有国と非核保有国の分断、さらには非核保有国の間の溝を埋めるよう、いっそう汗をかく必要がある。