学生のディエゴ・エルナンデスさんは、先週、大統領を解任するための国民投票の実施を求めて首都カラカスの選挙管理委員会へ行進した約2000人の抗議者の中にいた。「私たちは流血沙汰を避けるために選挙を求めます」。彼は「今、リコール投票を」と書かれたプラカードを掲げながら、記者たちにこう語った。
エルナンデスさんはすぐに、デモを解散させるために催涙ガスを使った国家警備隊に逮捕され、10時間拘束されて尋問を受けた。「政府は必死になっている。私たちを威嚇し、私たちが今陥っている惨状から国を救おうとするのを止めようと思っているんです」。釈放された数日後に本紙(英フィナンシャル・タイムズ)にこう語った。
ニコラス・マドゥロ大統領に対する抗議――この抗議の後もデモが数回行われた――は、ベネズエラが同国史上最悪の部類に入る危機に直面しているときに起きた。ベネズエラは今、度を超した物不足と急増する暴力、今年481%に達すると予想されるインフレに苦しめられている。
抗議者に対する厳しい扱いに、多くの人は恐れをなすようになった。マドゥロ氏の率いる統一社会党(PSUV)政権が手段を選ばず権力の座にしがみつき、いわゆるリコール国民投票を通じて同氏を大統領の座から降ろそうとする野党の取り組みをくじいているのだ。
大統領は13日、「我が国を安定させ、国内外のすべての脅威と対峙する」ために非常事態を宣言し、この見方を打ち消すことはなかった。14日に開かれた反政府集会で、カラカスの弁護士、ロシベル・トレスさんは、非常事態宣言は「民衆の抗議を封じることを意図したものだ」と語った。
■経済縮小 インフレ率は1642%見込む
石油輸出国機構(OPEC)加盟国で原油埋蔵量がサウジアラビアを上回るベネズエラは、長年の経済失政、そして今度は原油価格の下落によって大きな打撃を受けている。国際通貨基金(IMF)は、ベネズエラ経済が2015年の5.7%減に続き、今年8%縮小すると予想している。急速に高進するインフレ率は、来年1642%を突破すると予想されている。
リコール国民投票への支持は現在、180万人の署名を集めている。投票に向けた手続きを始めるために必要な20万は超えているが、実際に国民投票を実施するために必要な400万には届かない。調査会社データナリシスによる世論調査は、ベネズエラ人のほぼ7割がマドゥロ氏の退任を望んでいることを示している。