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「トゥヘルの香川に対する無理難題は、あの名物監督を思い出す」ドイツ・ブンデスリーガ第34節 ボルシア・ドルトムント-1FCケルン

ドルトムントのホーム、ジグナル・イドゥナ・パルクでのブンデスリーガ最終戦。

試合は前半11分にカストロのミドルシュートでドルトムントが先制するものの、27分、43分と一発のパスで裏を取られてケルンが逆転、ドルトムントはその後も決定機を2度作られながらも失点を免れ、後半30分にロイスのFKでやっとこさ同点に追いつく体たらくで、1週間後に迫ったバイエルンとのポカール決勝に向けて不安が募る内容になってしまった。

ドルトムントが苦戦した一番の要因は、もう次にポカールに頭が行ってるのか、連戦の疲労が出ているのかおそらく両方だったのだろうが、チーム全体の集中力が欠けていた事だろう。1点目はベンダーの不用意なクリアミスを拾われたもので、2点目もベンダーがマークで前に出たのにカバーする選手がおらず、ヴァイグルがヨイッチに振り切られて決められたもので、きちんと集中していればどちらも防げた失点だった。

そして香川も動き出しのタイミングと判断が遅く、味方のパスに反応が遅れて追いつけなかったり、パスを受けても反転せずにそのままバックパスが返すシーンが多く、前を向いてドリブルをしても結局ボールが流れて奪われてしまったりと、香川らしくない頭の鈍さというか明らかに集中を欠けているプレイぶりだった。

ただそれは、トゥヘルの戦術も大きく影響したと思っている。前節のフランクフルト戦では今までやった事が無い中盤ダイアモンドの4-4-2にしてすっかり攻撃の停滞を招いてしまったが、今節もトゥヘルは性懲りもなく3-1-4-2という変則的な戦術、しかも2トップはロイスとラモス、左右ウイングがシュメルツァーとオーバメヤン、インサイドハーフがカストロと香川という謎のポジションチェンジ。

ラモスは基本的に一瞬の動き出しで勝負するワンタッチゴーラーだし、ロイスはスペースがあってなんぼの選手でポストプレイではほとんど役に立たない。組み立てへの参加では彼らよりもまだマシなオーバメヤンは右サイドに追いやられているので、ヴァイグルがボールを持っても5-4-1で引きこもるケルンに対してパスコースがほとんど作れない。それでも序盤は香川が細かく動いてゾーンの間でボールを受けようとしていたが、ケルンがヴァイグルと香川の間のコースを消すようになってからは香川も試合からすっかり消えてしまった。

前半の終わりごろに、香川がインサイドハーフの位置からトップ下に上がり、左右に動いてボールを受けるようになってからは存在感を見せるようになったが、当然香川がいた右の中盤はスペースが空いてしまい、そこをベンダーが上がってカバーしていた裏を取られての失点だったので、ヨイッチのゴールは香川にも多少の責任があったと言える。後半は4-3-3に戦術変更して守備は安定させたが、香川自身は15分にライトナーと交代してしまった。

この試合に限らず、今期の香川は最初から最後までトゥヘルの戦術に振り回されてしまった感がある。前半戦はインサイドハーフとして主力に定着したと思ったら、後半戦はトップ下に固定されてボールの受け方に苦しみ、1トップの脇のスペースを使ってようやくプレイスタイルを固めた頃に、またもインサイドハーフにコンバート。もともと、自分のリズムや感覚でプレイしたがる香川にとっては、過剰な柔軟性、ポリバレント性を求めるトゥヘルの日替わり戦術に対して、相当しんどい思いをしているのではないかと思う。

今まであまり重なる事は無かったが、選手よりも監督、選手のコンビネーションよりも戦術という優先をはっきりする態度、選手間の競争を無理にでも作り出そうと言う姿勢、思いつきでいきなり戦術テストをやってしまうところ、土壇場で謎の選手起用をやってしまう点は、あのトルシエと似ている部分が多いなと改めて感じてしまった。

トルシエが中田に対してチームのボスになってしまう事を嫌ったように、トゥヘルはインサイドハーフやトップ下に香川を固定し続けて、「香川のチーム」になってしまう事を恐れているのでは? とついうがった見方をしてしまうのだ。さて最後の土壇場であるポカール決勝では、香川はどんな起用のされ方をするのだろうか。

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