消化器内を移動できる「肉でできた折り紙ロボット」
人間の消化器内を移動できる「折り紙ロボット」が開発された。温めると収縮する素材を使う事で展開と移動が可能。小さな磁石が埋め込まれており、体の外から磁界を使って操縦することができる。
PHOTOGRAPH AND VIDEO BY MELANIE GONICK/MIT
TEXT BY BETH MOLE
TRANSLATION BY RYO OGATA, HIROKO GOHARA/GALILEO
ARS TECHNICA (US)
マサチューセッツ工科大学(MIT)や東京工業大学などの研究チームは5月12日(米国時間)、人間の消化器内を移動できる「折り紙ロボット」を開発したと発表した。
5月16~21日に開催される「ロボット工学とオートメーションに関する国際会議(ICRA)」で発表されるというこのロボットは、消化器までは折り畳んだ状態で氷でできたカプセルに入ったかたちで届けられ(カプセルは途中で溶ける)、消化器内部で展開する。そして、薬を送り込んだり、胃の内部の傷を修復したり、誤って飲み込まれた危険な異物を取り除いたりできる可能性があるという。
このロボットは2つの層からなる。「Biolefin」と呼ばれる、生物分解可能なシュリンク包装と、ソーセージの皮に使われるブタの腸を乾燥させたものだ。温めるとBiolefinの部分が収縮し、ブタの層にある折り目と切り込みに基づいて、全体が折り畳まれる。
この収縮と折り畳みの動きによって「スティック・スリップ(摩擦面間に生ずる付着と滑りの繰り返しによって引き起こされる自励振動)」が生まれる。つまり、ロボットの表面が摩擦によって胃の表面に付着するが、新たな部位が温まるとロボットが折り畳まれて変形し、滑り始めることを繰り返すのだ。
ロボットは、蛇腹状のひだの真ん中に小さな磁石が埋め込まれており、体の外から磁界を使って操縦することができる。さらにこの磁石は、誤飲されたボタン電池を体内から出すためにも使われる。おもちゃ、腕時計、計算機などに使われる小さなボタン電池は、子どもが誤って飲み込む事故が毎年多数起きている。ボタン電池が食道や胃に留まると、組織が焼けて穴が開き、致命傷になる恐れがある。
MIT Newsのデモ動画では、このロボットを使って、模造された胃の中でボタン電池を移動させることに成功している。
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