大阪、堺市に住む27歳の男性です。
走行中に自転車が突然壊れ、大けがを負いました。
男性
「まさかと。
そんなはずは、想定してないんで、通常起きないことなんで。」
自転車で自宅へ戻ろうとしていた男性。
いつもと変わらず、特に異常は感じなかったと言います。
しかし、突然、「バキッ」という音がして、地面にたたきつけられました。
男性
「起きた瞬間のことは、記憶があまりないんで、気づいたらもう自転車が折れて、顔中血だらけという状況でした。」
歯を8本、そして鼻の骨を折る大けがでした。
男性が乗っていた自転車です。
アルミ合金でできた幅10センチほどのフレームが真っ二つに折れていました。
購入から7か月後のことでした。
男性は、自転車をインターネットで購入。
中国製で価格はおよそ2万円でした。
同じようなタイプの自転車は店舗では5万円から6万円ほどしたため、ネットでの購入を選んだと言います。
この事故を調査した国民生活センターは、“亀裂はフレームの製造工程で、発生していた可能性があり、それが、走行時の負荷で破断したものと考えられる”と結論づけました。
販売した会社も、製品の欠陥は認めていますが、男性の治療費をどこまで補償するか今も争っています。
男性
「全ての自転車が安全で普通に乗れるものだと思っているので、すごく裏切られた気持ちでいっぱいです。」
実は今、国内の自転車は、9割以上が輸入品です。
平成2年に関税が撤廃されると輸入が増加し、12年には国産を上回るようになりました。
輸入製品の安全性のチェックはどうなっているのか。
店舗での販売とネットでの販売では、違いがあることがわかってきました。
まずは、店舗で販売されているケースです。
この日、大阪港に到着したのは、台湾製の自転車。
これらはすべて、メーカーの直営店で販売されるものです。
メーカーでは、港近くの事務所でフレームの強度、部品の不備などをチェック。
さらに試し乗りも行い、異常があれば、その種類全ての出荷を取りやめます。
自転車メーカーテクニカルマネージャー 秋吉健さん
「入念にチェックしておかないと、不良な商品がたくさん流通してしまう危険があるので、かなり厳しくチェックします。」
その後、店舗でも一台一台整備してから購入した人の元へ届けられます。
このように、店舗で販売される自転車は、いくつものチェックが行われる一方、ネット販売の自転車の中には、十分チェックが行われない場合もあります。
そのため欠陥品が出回るリスクが高くなるのです。
こちらはインターネットで売られていた、中国製の自転車です。
この自転車の強度をテストした時の映像です。
歩道の継ぎ目の高さにあたる4センチの段差を上ろうとしたところ…。
タイヤが付け根から折れ、ハンドルを支えるフレームにも亀裂が入っていました。
国民生活センター 商品テスト部 三好信幸主査
「通常の自転車であれば、簡単に乗り越えられる段差であると。
一般の道路で使用するには、強度がちょっと不足しているのではないかと考えています。」
そもそもの設計や構造に問題がある自転車までインターネットで販売されていたのです。
5年前、千葉県君津市でこの自転車に乗っていて大けがをした藤井史朗さんです。
藤井史朗さん
「値段が非常に安いなと、ネットで見たら。
ネットで買おうと思いました。」
値段はおよそ6,000円。
週に1回ほどしか使わないため、できるだけ安いものを選びたかったと言います。
購入から半年後。
自宅に帰る途中で事故は起きました。
転倒して、口の周りを骨折したのです。
治療費は500万円を超え、今も病院に通っています。
藤井史朗さん
「歯ぐきが、グッとえぐれた状態になっています。
強く打ったので歯槽骨(しそうこつ)ごと無くなってしまった。」
藤井さんは、販売会社を提訴。
裁判所は、“通常有すべき安全性が欠けており、欠陥があった”として、
会社に2,300万円余りの賠償を命じました。
しかしそのとき、販売した会社は、すでに倒産していました。
賠償金は今も支払われていません。
藤井史朗さん
「踏んだり蹴ったりという状態なんですけど、非常に理不尽に感じますし。
問題を出した業者が逃げ切っていることに非常に憤りを感じます。」
欠陥製品に詳しい専門家は、こうした事故を繰り返さないためにも国が厳格なルールを定める必要があると指摘しています。
欠陥製品に詳しい 中村雅人弁護士
「業界では、もちろん一定の任意の基準を作って守るようにしましょうと言っていますけれども、そういうことは全くお構いなしの業者は、いくらでも安く自転車を提供してるわけです。
やはり安全を守るための基準というのは、しっかり作るべきだと思います。」