春になると、多くの人が外へ出かける。由緒ある古宮や史跡に足を向ける人も少なくない。忙しい現代人たちに、庭園はひとときの安らぎを与えてくれる。とりわけ古宮や史跡の庭園は歴史を感じさせてくれる。だが、残念なことがある。韓国の伝統庭園が植物ばかりなことだ。庭園の中心となるハス池、石を積み上げて作った築山など、伝統的な庭園に欠かせない構造物が絶対的に少ないのだ。
韓国の昔の文献や絵画によると、庭園を作るときにはまずハス池を掘り、その周りに築山を作り、あずま屋、橋、石垣などを配置し、植物を植えた。その代表的な庭園が、南部の慶尚南道咸安郡にある「舞沂蓮塘」だ。戊申の乱(1728年)で義兵を挙げた周宰成(チュ・ジェソン)の生家の離れに作られた庭園だ。舞沂蓮塘を描いた絵画を見ると、四角いハス池の中に四角い島が描かれているなど、いくつかの特徴がある。
南西部の全羅南道潭陽郡にある瀟灑園は、朝鮮王朝時代の学者の梁山甫(ヤン・サンボ)が師匠である趙光祖(チョ・グァンジョ)の死を期に作った別荘庭園だ。高敬命(コ・ギョンミョン)による無等山(光州市)の紀行文『遊瑞石録』は、当時の瀟灑園について詳しく描写している。「渓流が家の東側から塀を通って流れ込み」「小ぶりな一本橋」「小さな滝の西側に小さな家1棟の光風閣」「その南側には石を何層にも高く積み上げて作った築山」「小さなあずま屋」「軒のすぐ横にアオギリ」「溝を彫った丸太で作った飛溝で渓流を引き込み」「ハス池の西側には太い竹林」などの表現が見られる。
韓国、中国、日本の北東アジア3カ国は同じ文化圏に属している。中国と日本は自国の伝統庭園を国の誇りとして世界にアピールし、安らぎを求める国内外の観光客のニーズを満たしている。韓国は中国や日本の庭園に劣らない優美で独特な庭園があったにもかかわらず、現存する庭園、復元された庭園はいずれも植物が主体で訴求力が低い。中国、日本と差別化した韓国の庭園は、観光の大きな目玉になり得る。今からでも、庭園の韓国らしさ、美しさを世界にアピールしていこう。