やじまかすみの女子の欲望を叶えるものづくり
90年代の一瞬の輝き、憧れのポケベルを作ってみた!
はじめまして。やじまかすみです。手芸と電子工作を中心に、ものづくりをしてお仕事をさせていただいています。電子工作やプログラミングを駆使して、女子の欲望を叶えるものづくりをしていきます!(撮影:加藤甫)
ポケベルは憧れのデバイス
ちっちゃい頃、ポケベルは憧れのデバイスでした。高校生のお姉さんたちが持っていて、彼氏と秘密のやりとりをしているっていうイメージ。広末涼子のポケベルのCMがすっごいかわいくて印象的でした。大きくなったら、あんな風にポケベルで彼とやりとりするんだって思ってました。
でも、高校生になった頃にはポケベルなんてなかった……ポケベルは私にとって体験することのない未来になってしまったのです。
ちなみに、私やじまは1989年生まれ。広末涼子のCMが96年に流れていたらしいので、6歳くらいの時に見ていました。
スマホでのやりとりに疲れた
今目の前にあるのはスマホ。仲のいい人とはLINEでやりとりするけど、正直既読スルーとか言われることに疲れました。通知がきたらメッセージを開かなきゃいけなくて、何か返さなきゃいけなくて、スマホの前にずっと縛られているみたい…… ほんとは遠くにいる人とやりとりできる、つながっていられるってだけで嬉しいはずなのに、なぜか嬉しくない気持ちになることが多々あります。
だから、私はやっぱりポケベルが欲しい! 憧れのデバイスを手に入れて、離れてもつながっていること自体を楽しみたい! ドキドキしたい! こうなったら自分で作ってやります!
というわけでポケベルを作りました!
作り方や技術については、後ほどたくさんお話しします!
ポケベルは90年代を駆け抜けた
「ポケベル作りました!」と言われても、若い世代の方々は全くピンと来ていないと思います。ポケベルはとっても短命のデバイスだったので、それも無理はありません。92年に流行し始め、97年頃にはPHSや携帯電話に取って代わられてしまったのです。まさに90年代を駆け抜けたデバイス!(でも、一部の30代の方々は今頃青春を思い返してドキドキしているはずです……!)
なので、ここで使い方をおさらいしておきます。
数字だけのやりとり
まず今回のポケベル作りで参考にしたのは、数字だけでやりとりをするポケベル黎明期(92~95年頃)の通信です。その後は文字や絵文字も送れるようになったのですが、私の中のポケベルといえば数字だけを送れるタイプなのです。数字しか送れないので、当然当て字でやりとりをするのですが、これが暗号みたいでワクワクします。
では、これをなんと読むかわかるでしょうか? 「0840」
なんとなく読めますよね? 正解は「おはよう」です。
では、これはなんでしょうか? 「114106」
難易度がグッとあがります。知っている人からしたら懐かしいはず。
正解は「愛してる」です。
ものすごーく当て字ですよね。当て字にもほどがある。でもこれだけじゃありません。いくつか並べますが、もっと苦しいものもあります。
889=はやく
-015=ボーリング行こ
0106=待ってる
3341=さみしい
0906=遅れる
0833=おやすみ
8110=バイト
3476=さよなら
10105=今どこ
04510=お仕事
09106=起きてる
724106=何してる
こんなふうに当て字もいいところ、無理やりと思うような語呂合わせも多いのです。ちょっとばかばかしくもありますが、当て字でもやりとりしてやる!という気概が感じられて私は好きです。
公衆電話に長蛇の列?
実は、ポケベルは端末だけでは送信ができなかったんですね。
これこそ若い世代には驚きかもしれません。数字の受信はできるけど、発信はできない。では、どうやって送るかというと、ポケベルの電話番号に電話をかけて、数字を送るのです。だから、ポケベルが流行っている高校の近くの公衆電話には長蛇の列ができていたとか(あ、今や公衆電話の説明もしないといけないのかもしれない……街角にある電話ボックスを見たことない若者もいるんだろうか。テレホンカードとかも知らないのかな。時代の移り変わり恐ろしい)。
今回作ったポケベル
さすがに公衆電話を使ってという通信の再現はできなかったので、今回はReceivedモード、Sentモード、inputモードを作り、インターフェイスはシンプルに、0~9までのダイヤルとボタン2つを配置しています。
黒いポケベルと白いポケベルが一対一で紐付けられていて、必ず相手に送れるようになっています(実は今回、公衆電話の役目をしてくれているのはTwitterなんです! 詳しい説明は後ほど)。
Receivedモード。受信した文字列を表示します。ディスプレイの制約上、横8文字までしか入らないので今回は8文字以下でやりとりをしています。
inputモードではこのように表示されます。白いダイヤルを回すとinputの横の数字が変わり、左の黒いボタン(Enterボタン)を押すと確定されて上の行に入力されます。Enterボタンを長押しすると送信ができます。
ちょっと見えにくいですが、白いダイヤルは隙間から数字が覗いていて、0~9の数字を選択できます。黒いボタンは左がEnterボタンで右がMode変更ボタン。Mode変更ボタンを押すと、Receivedモード→inputモード→Sentモードと切り替わります。
Deleteボタンはついていないのですが、中に加速度センサが入っているので、inputモードでポケベルを振ると入力中の文字が削除されます。
Sentモードでは、一番最近送ったメッセージが表示されます。