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 2030年代に火星への有人飛行を予定するNASAであるが、おそらくは普通とは少々違った発想が必要となるだろう。そうしたアイデアを募るため、NASAイノベーティブ・アドバンスト・コンセプツ(NASA Innovative Advanced Concepts = NIAC)というプログラムの一環として、8つの奇抜なアイデアに対して2回目の資金助成が実施される運びとなった。
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 このフェーズIIでの助成額はそれぞれにつき50万ドル(約5,400万円)で、対象はNIACのフェーズI期間において実証された実現性と効果に基づいて選び出された。こうしたコンセプトはいずれも開発初期段階にあり、実現まで今後10年以上が見込まれ、また失敗する可能性も高い。だが資金を獲得できたのはいずれも驚きのアイデアばかりだ。以下でそのいくつかをご紹介しよう。

1.人工冬眠
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 宇宙船に閉じ込められて暮らす9ヶ月は長い。火星に到着するにはまさにこれだけの期間がかかるわけだが、それは退屈なだけでなく、大量の物資も必要となる。だが仮にその行程を眠ったまま過ごすことができれば、退屈することもなく、物資の量も大きく減らすことができるだろう。

 「火星飛行における人体停止状態を利用した冬眠誘導式輸送ハビタット(Torpor Inducing Transfer Habitat For Human Stasis To Mars)」というプロジェクトが開発するのは、宇宙飛行士の中核体温をマイナス12度程度にまで下げて代謝活動を抑制する技術だ。その間、栄養は静脈から注入する。この構想は過去にもお伝えしたので詳しくはこちらの記事を参照いただきたい。

 研究開発を担当するスペースワークスという会社は、冬眠した宇宙飛行士を乗せる宇宙船モジュールも提案している。このシステムが成功すれば、火星飛行はもちろん、それ以外の恒星系への移動にも応用できるかもしれない。


2.星間移動
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 有人でなかったとしても素晴らしいのがこのアイデアだ。物理学者フィリップ・ルビンが考案した本コンセプトは、レーザーを利用して極小の宇宙船を他の恒星系まで送り込むというものだ。これは大富豪ユーリ・ミルナーから巨額の資金援助を受けることが決定しているプロジェクトであるが、NASAからの助成も得た形だ。実現まであと30年はかかるだろうと見込まれているが、成功すれば最も近い恒星まで20年で小型宇宙船を送ることが可能となる。


3.宇宙船用磁気フィールド
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 有人の宇宙船が火星へ着陸するとき、減速するために薄い大気を利用しなければならない。このとき、大気との摩擦によって発生する熱から船体を守る対策が必要となる。そのために船体は重量が増加するうえ、余計なコストもかかる。

 そこで推進技術の専門家デビッド・カートリーが考案したのは、宇宙船をプラズマのバリアで包み、エアロブレーキの制御を実現しようというものだ。これによって各火星有人飛行ミッションあたり1,950億円相当ものコスト削減が可能になるという。さらに宇宙飛行士を宇宙線から保護できる可能性もある。


4.伸展式ハビタット
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 このプロジェクトについて詳細はまだ明らかではないが、「テンセグリティ・アプローチによる1g伸展式ハビタットの宇宙内建設(Tensegrity Approaches to In-Space Construction of a 1g Growable Habitat)」というコンセプト名から推測することができるだろう。

 発案者のロバート・スケルトンはテンセグリティについて次のように説明している。

 「糸と棒を組み合わせて作られる、展性があり、柔軟かつ調整可能な構造。クモの繊維の分子構造を基礎とし、糸の張力を調整することで形状を変化させることができる」

 またこちらのテンセグリティ構造を使えば、転げ回って着陸することもできるかもしれない。

 なお残り半分の助成対象コンセプトの名称は次の通りだ。

5. 低温選択性表面(Cryogenic Selective Surfaces)
6. プラズモン力推進の実験的実証およびシステム解析(Experimental Demonstration and System Analysis for Plasmonic Force Propulsion)
7. 新型大気衛星コンセプトの飛行実演(Flight Demonstration of Novel Atmospheric Satellite Concept)
8. 開口部のさらなる開発(Further Development of Aperture)
via:popsci.motherboardなど/ translated & edited by hiroching
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  • 2016年05月17日 09:26
  • ID:L0DXEI4N0 #
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