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【社会】

子ども貧困率調査 実施は1県のみ 都道府県・政令市に本紙アンケート

 子どもの貧困対策推進法などが自治体に求める実態把握に関し、本紙が全国四十七都道府県と二十政令指定都市にアンケートしたところ、約九割が困窮層の割合を示す「子どもの相対的貧困率」の調査を実施せず、具体的な予定もないことが分かった。既に調査した自治体は沖縄県だけで、大半の自治体の消極姿勢が浮き彫りになった。

 同法は深刻化する子どもの貧困の改善に向け二〇一四年一月に施行。内閣府などが、家庭の困窮に子どもが巻き込まれている実態を研究・把握し、対策を講じるよう自治体に求めている。

 全国の子どもの相対的貧困率は厚生労働省が三年ごとに調べており、一三年の調査で16・3%と過去最悪を更新した。ただ、全国で二万六千世帯を無作為に抽出した調査のため、自治体単位の数字が存在せず、専門家から「地域間の格差などの実態を踏まえた、きめ細かい対策にはつながらない」との指摘が出ている。

 アンケートでは、子どもの貧困率を自治体として独自に調査した実績の有無などを質問。回答があった六十五都道府県・政令市の94%に当たる、東京都など六十一の自治体が実績や具体的な予定が「ない」と答えた。高知県と札幌市、熊本市の三自治体は「一六年度中に実施する予定」とした。千葉市は「現在、実施について検討中」と回答した。

 貧困率以外の方法で子どもの実態を把握する取り組みには「一六年度中に調査を実施予定」(東京都)、「ひとり親家庭に支給している児童扶養手当の受給者を対象に、調査を一五年度実施した」(神奈川)などの回答があった一方で、約三割に当たる十九自治体が具体的な取り組みをしていないと答えた。

 貧困率などを通じた実態調査が自治体レベルでなかなか進まない理由については「人手や財源の確保が困難」(和歌山)などの回答があった。また「国が実施した調査について、自治体ごとの結果の詳細を開示していただきたい」(千葉市)など、国主導の調査を求める意見が多かった。

 沖縄県は一五年に県内の貧困率を調査し、一三年の厚労省調査の数値を13・6ポイント上回る29・9%と推計した。担当者は取材に「問題の深刻さが明確になり、対策のための予算などが組みやすくなった」と話した。

 アンケートは四月下旬から五月上旬に書面で実施。回答率は97%だった。

◆実態把握の遅れに驚き

 子どもの貧困に詳しい中村強士・日本福祉大社会福祉学部准教授の話 自治体による実態把握がこれほど進んでいないのは驚きだ。貧困状況は地域ごとに格差や特徴があり、子どもたちの生活ぶりも異なる。現状を把握しなければ対策を立てるのは困難で、都道府県や市町村はもっと積極的に調査をするべきだ。

◆自治体負担増す可能性

 内閣府子どもの貧困対策担当の話 対策推進法の施行から2年余りで、実態把握の取り組みは今後広がっていくと考えている。相対的貧困率は重要な指標の一つだが、算出には自治体が持つさまざまなデータが必要。国が調査を主導してもこれらのデータを出してもらう必要があり、結果的に自治体の負担が増す可能性もある。

 <子どもの貧困率> 17歳以下の子ども全体のうち、標準的世帯の年間可処分所得の半分(2013年調査では約122万円)未満で暮らす割合。04年調査の13・7%から上昇を続け、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国の平均より高い。13年調査では、ひとり親世帯は54・6%にのぼる。

 <子どもの貧困対策推進法> 貧困の連鎖を断つことを目的に2013年に議員立法で成立。国には教育や保護者の就労、経済支援などを総合的に進める大綱の策定を、地方自治体には地域の状況に応じた施策を義務付けた。国、地方の双方に、対策のため子どもの貧困に関する調査をするよう求めている。

(東京新聞)

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